丁寧な音楽作りが光る新星トリオの誕生!
2020年は大変なベートーヴェンイヤーになってしまったが、次代に向けて育っていく芽もある。毛利文香(ヴァイオリン)、田原綾子(ヴィオラ)、笹沼樹(チェロ)の三人は、昨年8月にトッパンホールで開催されたランチタイムコンサートでベートーヴェンの弦楽三重奏曲op.9-1(第2番)と9-3(第4番)を演奏した。目利きで知られるトッパンホールのプロデューサーがその丁寧な音楽作りに注目し、フルサイズのコンサートが開催される運びとなった。
若手とはいえ、彼らはすでに多くの実績を重ねている実力者だ。毛利は慶応義塾大学、笹沼は学習院大学に学びつつ桐朋学園大学のソリスト・ディプロマ・コースに通い、早くから数々の国際コンクールで入賞してきた。田原は第11回東京音楽コンクール弦楽部門第1位、第9回ルーマニア国際音楽コンクール全部門グランプリなどに輝いた後、ヨーロッパに学び、室内楽にオーケストラにと活動の幅を広げている。
プログラムは、前回取り上げなかったベートーヴェンのop.9-2(第3番)ではじめ、後半にモーツァルト晩年の大曲「ディヴェルティメントK.563」を置き、間にヒンデミットのトリオ第1番を並べる意欲的なもの。
もともと三人は、13年に若手奏者たちが自主的に立ち上げたラ・ルーチェ弦楽八重奏団のメンバーとして共演を重ね、勝手知ったる間柄だ。前回の三人での共演には本人たちも手ごたえを感じたようで、今後、このメンバーで「トリオ・リズル」として継続的な活動を行っていくことが決まった。弦楽トリオの名曲の海を、力強く泳いでいってほしい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年5月号より)
2021.6/10(木)19:00 トッパンホール
5/12(水)発売
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com