ハイドンに万感の思いを込める
10年間にわたり東京交響楽団を率いてきたスダーンが今シーズンをもって任期満了、勇退となる。同団に新風を吹き込んだ功績は計り知れず、音楽監督として臨む最後の演奏会はファンにとっても感慨深いものになるだろう。その3月のコンサート(東京オペラシティシリーズ)でスダーンが選んだのは、オール・ハイドン・プロだ。
ハイドンはモーツァルトからベートーヴェン、さらにロマン派へと続く独墺系シンフォニーの系図の原点として、欠かすことのできない作曲家だ。スダーンは毎年、シーズンを貫くテーマ作曲家を決めてきたが、ハイドンも2007年に取り上げている。“交響曲の父”の第1番ではじめ、最後の第104番「ロンドン」で締めくくる今回の選曲にも、万感の思いが込められているように思われる。堂々たる構成を持つ「ロンドン」が書かれた数年後にはベートーヴェンが最初の交響曲を作曲するが、スダーンが東京交響楽団にもたらしたものも、今後の同団の発展の中で礎石のように輝いていくことだろう。
間に配されるのは2つのピアノ協奏曲(ハ長調 Hob.XVIII:5、ニ長調Hob.XVIII:11 op.21)。ここではモダン・ピアノではなく、その前身であるフォルテピアノが用いられる。ピアノに比べタッチが軽く残響が短い分、より軽快な身振りが前面にでる。まさにハイドンが考え、聴いてたであろうサウンドが期待できる。ソロはピート・クイケン。クイケンといえば中欧圏の古楽復興を牽引した一家だが、ピートはガンバ奏者のヴィーラント・クイケンの次男にあたり、中堅奏者として世界的に活躍している。こちらの競演も楽しみだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2014年2月号から)
第78回 東京オペラシティシリーズ
★3月22日(土)・東京オペラシティコンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp