大野和士(指揮) 東京都交響楽団

近接する時代の中で生まれた2つの傑作を聴く

 4月の東京都交響楽団定期演奏会Bシリーズと都響スペシャルの指揮台に立つのは、音楽監督の大野和士。ショスタコーヴィチの交響曲第1番とマーラーの「大地の歌」を組み合わせた興味深いプログラムが組まれた。

 時代を代表する交響曲作曲家という点で、マーラーの後を継いだのがショスタコーヴィチ。マーラーは9番目の交響曲として、二人の独唱者を要する交響曲「大地の歌」を作曲した。半ば連作歌曲としての性格を持ち、しかも歌詞は李白らの漢詩に基づいている異色作は、「いったい交響曲とは何なのか」という疑問を抱かせずにはおかない。一方、ショスタコーヴィチはレニングラード音楽院の卒業制作として交響曲第1番を作曲した。外観こそ4楽章制の器楽作品という交響曲の定型を踏まえているものの、ショスタコーヴィチ自らが「グロテスク風交響曲」と呼んだように、その中身はアイロニーや歪んだユーモアで満たされている。ショスタコーヴィチは第一歩から交響曲のあり方を問うような作品を書いている。マーラー「大地の歌」の初演は1911年。ショスタコーヴィチの交響曲第1番初演は1926年。両者の隔たりは、案外と近い。

 「大地の歌」ではメゾソプラノの藤村実穂子とテノールのニコライ・シュコフが独唱を務める。世界の檜舞台で活躍してきた藤村と、オーストリア出身でパリ・オペラ座やザルツブルク音楽祭にも出演するシュコフ。二人の実力者によるマーラーは大きな聴きものとなりそうだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年4月号より)

*新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い、テノールのニコライ・シュコフが来日できなくなったため、代わって宮里直樹が出演することとなりました。(3/25主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

都響スペシャル 
2021.4/25(日)14:00 サントリーホール
第925回 定期演奏会Bシリーズ 
2021.4/26(月)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp