本山乃弘 ピアノリサイタル ー情動との対峙ー

心の中の情動に向き合い、表情に満ちた名作を紡ぐ

(C)Shinji Ito

 「ひとの心に眠る様々な情動と正面から向き合い、血を通わせて音にのせることに焦点を当てた」。ピアニストの本山乃弘は綴る。「情動との対峙」と題した、東京音楽コンクール入賞者リサイタル。ベートーヴェンとスクリャービンを軸とする意欲的なプログラムに、静かなる熱き想いを込める。

 長崎県出身。東京藝術大学卒業後の2年半は右手の病気のため、左手による演奏活動に専念。その間にアルド・チッコリーニの知己を得て、2008年に渡仏。パリ・エコールノルマル音楽院に学び、第12回東京音楽コンクールでは第3位に入賞。ソロや室内楽で演奏する一方、映画『蜜蜂と遠雷』で演奏指導を担当するなど、多彩に活躍する。

 ステージ前半ではまず、第8番「悲愴」と第18番「狩」、ベートーヴェンの2つの対照的な名ソナタを披露。後半ではラヴェル「高雅にして感傷的なワルツ」、ショパン「2つのノクターン」op.62、そしてスクリャービンのソナタ第2番「幻想」と、「人生と愛の周辺にある、はかない何かが詰まった作品たち」(本山)を弾く。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2021年4月号より)

2021.5/16(日)14:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
https://www.proarte.jp