沼尻竜典(指揮) びわ湖ホール コルンゴルト《死の都》

(C)RYOICHI ARATANI

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 「湖のほとりの歌劇場」びわ湖ホール。指揮者沼尻竜典は、第2代芸術監督として、2007年から同ホールを率いるマエストロ。この3月には近代ドイツのロマンティックなオペラ《死の都》を取り上げる。
「《死の都》は愛情をテーマにしたロマンティックなオペラです。作曲者コルンゴルトはオーストリア系の人ですが、23歳でこのオペラの世界初演(1920)を果たして大ヒットさせています。同時代のドイツ圏の作曲家と言えばやはり大先輩のリヒャルト・シュトラウスになりますが、2人の音楽を比べてみると、コルンゴルトの方が純粋に音楽の美しさや楽しさを追求している感じがします。R.シュトラウスだと『オレって凄いでしょ?才能も技術も』といつも自分で言いながら曲を書いているような(笑)。実際凄いので何も言えないですが。でも、コルンゴルトでは、オーケストラがどれほど複雑な音色で伴奏しようとも、声の部分はわりにシンプルな動きです。そこが、聴き手の心にすっと入り込んでくる理由でしょう。彼の曲にきちんと取り組むのは今回が初めてですが、映画音楽の分野でも大活躍した人なので、知らないうちに接していたかもしれません。『スター・ウォーズ』にそっくりな曲も先んじて書いてますし、後世に与えた影響は大きいですね」
 その《死の都》の2大名曲といえば、第1幕の男女の優美な二重唱〈私に残された幸せは〉と、第2幕の道化師フリッツの耽美的なアリア〈わが憧れ〉。実は、作曲家とその父親が共同で台本も執筆したオペラであり、若い妻マリーを亡くした男パウルが、ブリュージュの街で亡き妻と瓜二つの踊り子マリエッタと出会い、死せる妻の面影も忘れられないまま、退廃的な愛に溺れるさまが描かれる。
「パウルは妻の死がどうしても受け入れられません。その苦悩を親友フランクも見守りますが、でも、死者でも何に対してでも、他人が執着するものにとやかく言っても仕方ない。もし自分が友人だったなら、もう少し長いスパンでパウルの様子を見守るでしょうが…。でも、幕切れで主人公はいったいどうなるのか? 栗山昌良先生の演出から目が離せません…」
 あまり知られていない名作の日本での舞台初演が、大津という場所で行われることは画期的だ。
「素晴らしいオーケストラもコーラスも必要だし、経験豊かな舞台&制作スタッフも要ります。そうした環境が、びわ湖ホールで開館以来積み上げられてきたことを誇りに思います。恵まれた環境にいる私たちは、ついそのありがたみを忘れがち。今回の演出チームは、僕の生まれる前からオペラに情熱を傾けて来られた先生方が中心ですが、我々もその精神を継承していければと思います。最後は、関わる人の熱意が勝負を決めるのが舞台の世界ですね。ご来場をお待ちしています」
取材・文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2014年3月号から)

★3月8日(土)、9日(日)・びわ湖ホール
問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136
http://www.biwako-hall.or.jp

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