ジョナサン・ノット(指揮)東京交響楽団

マジカルなタクトが現出させる彩り豊かな音色のパレット

ジョナサン・ノット
C)K.Miura

 昨年末には「第九」2公演のためだけに来日し、2週間の待機期間を経て一年ぶりに東響のステージに立ったジョナサン・ノット。東響メンバー、そして日本の聴衆に力強いメッセージを発した。次回の来日は5月。ノットらしいひねりの効いたプログラムとなっている。まずはアダムスの「ザ・チェアマンダンス」。1987年に初演されたオペラ《中国のニクソン》に先立って、その素材を管弦楽曲としてまとめた作品だ。アダムスは初期にはミニマリズム風のリズミカルな反復をトレードマークにしていたが、本作も心地よいパルスの上で豊穣な戯れが展開される。国際情勢が緊迫する中、中国とアメリカの国交正常化の糸口となった大統領の電撃訪問を主題とした作品を取り上げるのもタイムリーだ。

 ノリのよいアダムス作品の後に来るのは、男女の恋のさや当てを描いたドビュッシーのバレエ音楽「遊戯」。自由に、即興的に広がっていく音楽は、作曲家晩年の境地を反映して、なんとも格調高い色彩を帯びている。

 そしてマーラーの交響曲第1番「巨人」。緊張の糸をぴんと張りながら巨大管弦楽を巧みにコントロール、透明感を保ちつつダイナミックな音響体を立ち上げるのがノット流。必死で応える東響とのコラボが、これまで見えなかった風景を現出させてきた。「巨人」でもノットのマジックは冴えわたることだろう。

 アメリカらしい明快さ、フランス風の色彩感、ドイツ的な構築性…。作風は三者三様だが、管弦楽の豊かなパレットに誘惑されっぱなしの2時間となるはず。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年3月号より)

第690回 定期演奏会
2021.5/8(土)18:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
https://tokyosymphony.jp