飯森範親(指揮) 東京交響楽団

力強い生命力を謳歌する


 東京交響楽団2月の定期演奏会は正指揮者・飯森範親が登場し、この人らしい爽快なプログラムを披露する。まだ寒さも厳しい時期だが、春の訪れ、新しい生命の息吹を先取りした雰囲気が楽しめそうだ。
 なんといってもドイツ20世紀の巨匠カール・オルフの代表作「カルミナ・ブラーナ」の、総力を結集した上演に注目したい。この曲、南ドイツの修道院で発見された古い歌の写本を元にしているが、酒や男女の愛の交歓を描写した歌詞に潜む力強い生命力が、オルフならではの単純かつパワフルな筆致によって高らかに歌い上げられる。半田美和子(ソプラノ)、高橋淳(テノール)、与那城敬(バリトン)といった実力派の歌唱陣に加え、同団のコンサートには欠かせない東響コーラス、さらには横須賀芸術劇場少年少女合唱団も加わり、運命の車輪の回転によってめぐってくる春の喜びを表現する。同じ音型や和声の反復は荒削りな原始性をたたえているが、パンチを効かせつつフレッシュに運んでくれそうだ。
 祝祭的な明るさとにぎやかさでは、前半のモーツァルトの2曲も引けをとらない。《フィガロの結婚》の初夜権を巡るどたばた騒ぎは、「カルミナ・ブラーナ」で歌われる男女の喜びにあい通じる。その序曲に続いて演奏される交響曲第38番「プラハ」も、《フィガロ》の成功がもたらしたプラハ訪問の際に書かれ、明るく快活、相性がいい選曲だ。東響がスダーンと行っているモーツァルト・マチネも評判がよいが、爽やかな音楽を聴かせる飯森のリードも楽しみだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2014年1月号から)

第617回 定期演奏会 
★2014年2月9日(日)・サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp