藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

英国音楽の美しき旋律と劇伴音楽の旗手による新作を存分に味わう


 夏の活動再開以来、毎回出色の成果をあげているのが東京シティ・フィルである。練られたプログラム(変更の際も凝った演目を用意)が目を引くし、何より演奏の充実が著しい。2月の定期には首席客演指揮者の藤岡幸夫が登場。夏の無観客配信ライブの熱演が話題になった組み合わせだが、聴衆のいる公演としては2019年末の第九以来の共演になり、しかも彼が特別な思い入れをもつ日本とイギリスの作品が並ぶ。その意気込みは推して知るべし。

 注目は、菅野祐悟のサクソフォン協奏曲の世界初演。サックス界の第一人者であり続ける須川展也による委嘱作品だが、メロディックな菅野の楽曲は、「聴きやすさ」を大切にする藤岡との相性も抜群で、2つの交響曲の初演も担当したほど。この日は須川の練達の名技と藤岡の共感あふれるタクトで、誰もが新作の誕生を楽しめる時間になるはず。

 美しいメロディといえば、イギリス音楽は外せない。今回選ばれたのはオーケストラの表現力が最大限に発揮される2曲で、最初はウォルトン「スピットファイア」より前奏曲とフーガ。元は映画用の楽曲で、とにかく「カッコイイ!」と唸らされること間違いなしの逸品だ。メインはホルスト「惑星」。言わずと知れた名組曲だが、有名な〈木星〉の名旋律を全体の中心として全7曲の大作をどう構築するか、そして英国音楽としてどう聴かせるのか。かつて同国で活躍した藤岡ならではの視点で新鮮に聴けるはず。華麗なサウンドと旋律美に満ちた3曲、ぜひともサントリーホールで堪能したい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年1月号より)

第340回 定期演奏会 
2021.2/13(土)14:00 サントリーホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp