精鋭集団が描く、二人の作曲家の“肖像”
アンサンブル・ノマドの今シーズンのテーマは「ともに生きる」。不透明な時代に生きることの意味を問いかけるものだ。その第3回は「境界の彼方」と題し、近藤譲とリュック・フェラーリの作品を組み合わせた。
対照的な作風の二人だが、プログラミングはまさにそんな作風の違いをコントラストとして打ち出したものとなった。近藤の旧作からはフルートとギターのための「ディシラム」(1996)、3人のマリンバ奏者のための「ラスターは彼女に帽子を渡し、そして彼とベンは裏庭を横切っていった」(1975)。各楽器の描くラインがそこはかとない戯れを繰り広げる、「線の音楽」を標榜する近藤らしい作品だ。フェラーリからは即興演奏の傑作「トートロゴス III」(1969/70)の2つのバージョンが演奏される。編成は自由、アクションと沈黙を各奏者が任意に組み合わせながら進むので、演奏ごとにまったく違う仕上がりとなる。フェラーリの任意性と近藤の禁欲的な戯れの振幅は、世界初演となる近藤の最新作「合歓」で締めくくられる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年2月号より)
2021.2/6(土)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:キーノート0422-44-1165
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