2020年12月、「第九」は特別な体験となる
今年の年末の「第九」は特別な体験になる。なにしろ目下のウイルス禍により、合唱団は活動が困難な時期にある。練習段階からの「密」を避けるために、年末恒例の「第九」を断念したアマチュア合唱団も多いことだろう。
東京交響楽団は今年の「第九」公演にあたり、人数と練習回数を減らして感染リスクを低減するため、アマチュア団体である東響コーラスに代わって新国立劇場合唱団を起用する。専門医の監修を受けて、最大限の感染予防対策が施されるという。今年はベートーヴェン生誕250年。ベートーヴェンが生まれたのは12月なので、このタイミングの「第九」ほど、記念の年を祝うにふさわしいコンサートはない。
そして、もうひとつの注目は出演者陣だ。指揮は音楽監督ジョナサン・ノット、独唱にジャクリン・ワーグナー(ソプラノ)、カトリオーナ・モリソン(メゾソプラノ)、クリスティアン・エルスナー(テノール)、リアン・リ(バスバリトン)といった国際色豊かな名が並ぶ。本稿執筆時点ではいまだ入国時の隔離措置等により大半のアーティストが来日を断念しているが、まもなく入国制限措置が徐々に緩和されるのではないかという期待が広がっている。その点でも、今年の「第九」は例年にない注目を浴びることになる。
舞台上にジョナサン・ノットが姿を現したら、客席はどんな反応をするだろうか。「ブラボー!」と叫ぶわけにはいかないが、空気が一変することはまちがいない。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2020年12月号より)
*新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い、カトリオーナ・モリソン、クリスティアン・エルスナーが来日できなくなったため、代わって中島郁子(メゾソプラノ)、笛田博昭(テノール)が出演することとなりました。(12/4主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
第九 2020
2020.12/28(月)18:30、12/29(火)14:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
https://tokyosymphony.jp