バッハの素晴らしさを皆さんと繋ぐサクソフォン奏者!
サクソフォン界の牽引者・須川展也が、バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ全3曲のCDをリリースし、コンサートも行う。須川初となる完全無伴奏の録音は、満を持しての挑戦だ。
「バッハの無伴奏ヴァイオリン曲は子どもの頃から大好きでしたが、演奏には至らず、ただ憧れの存在でした。サックスで演奏しないかとの公演のご依頼がきっかけで、フーガのないパルティータなら可能かと思い取り組みを開始。音域的に難しい中あらゆる調を試し、1番はト短調、2番は原調、3番はヘ長調とし、1、2番はアルト、3番はソプラノを用いることで実現しました」
今回は全曲が彼のアレンジだ。
「サックスで演奏して聴き手に楽しんでいただけるか、バッハの世界を共有できるかが最重要ポイント。第1番は古典的な慣例を生かし、人生を語るような『シャコンヌ』を含む第2番は人間らしさを表出し、明るい第3番はリピートを多めにしてバリエーションを楽しみました。苦労したのは、ヴァイオリンで演奏する重音をサックスではアルペジオで演奏しなければならない点。どの音を選ぶか、場合によっては省くかという繊細な作業。ハーモニー進行を鑑みて、ギリギリまで突き詰めました」
なかでも「シャコンヌ」には力が入る。
「辛い時や悲しい時も聴くと元気になる曲。特に途中で長調になる瞬間には救われます。同時にこの曲を表現できてこそ他の曲の深みもわかると考え、4年ほど前から各地で演奏を始め、少しずつ形ができてきました」
彼はまた「サックスでバッハを演奏する意味」にこだわる。
「リードから放つ音を教会で響かせるパイプオルガンと、奏者にとても近く、内面の表現に優れるヴァイオリンの両方を演奏したバッハは、もしかしたら両方の性格を持つサックスの到来を予見したのでは、と勝手に思っています。そしてCDタイトルに入っている『シークェンス』(英語)は『ゼクエンツ(旋律や和声の反復進行)』(ドイツ語)のこと。これは、バッハのゼクエンツが現代の音楽にたくさん取り入れられていて、様々なジャンルのルーツになっている、ということを言いたくて名付けました。代表例がジャズのツーファイブ。ジャズとともに広まり、ゼクエンツの心地良さを伝える役割をとりわけ担うサックスでバッハを演奏することは、実はものすごく関連していて魅力的なこと、と考えました」
東京公演では全曲を披露。さらに前半をバッハ、後半をピアソラやジャズをも含むあらゆる音楽へのバッハの影響を示すプログラムも各地で行う。
充実した活動を続ける須川展也がすべてをかけて取り組むバッハを、ぜひ体験しよう。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年10月号より)
須川展也 plays J.S.BACH サクソフォン・ソロ・リサイタル
バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ全曲
2020.11/26(木)19:00 紀尾井ホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://www.concert.co.jp
須川展也 サクソフォンリサイタル〜バッハ・シークェンス〜
2020.11/4(水) 佐賀市文化会館(RO♪ONクラシックの会0952-26-2361)
11/21(土) 高崎芸術劇場 音楽ホール(027-321-3900) 9/28(月)発売
12/27(日) 富山/入善コスモホール(0765-72-1105) 発売日調整中
CD『バッハ・シークェンス』
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
YCCS-10091 ¥3000+税
2020.10/21(水)発売
※全音楽譜出版社より楽譜も出版
2020.11/15(日)発売