シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団

いつもとは違った、美し過ぎるニューイヤー


 新年にシューマン&ラヴェル…これは大人のニューイヤー・コンサートと言うべきか。読売日本交響楽団の2014年は、常任指揮者カンブルランとピアノのロジェ・ムラロのフランス・コンビによる冒頭2人の作品で始まる。
 まずはカンブルランお国もののラヴェル。読響に精緻な美感と色彩感をもたらした彼の本領を聴くには、“管弦楽の魔術師”の作品がまさしく相応しい。「高雅で感傷的なワルツ」と「スペイン狂詩曲」の対照も妙味充分。特に“硬質の優美さ”ともいうべき独特の肌合いをもつ前者は、オーケストラでの生演奏が案外少なく、カンブルランで聴ける喜びは大きい。後者は、スペインのエキゾチズムが透明な色彩によって描かれる、華やかながらもデリケートな作品。カンブルラン&読響の特質からみて、普段日本では耳にし得ない音の配合を体感できるに違いない。
 前半に戻ってシューマン。カンブルランのシューマンといえば、読響の重厚な響きを生かしつつ明晰な構築が成された今年9月の交響曲「春」が印象的。今回の「マンフレッド」序曲では、分厚い響きと幻想的なロマンが明快に解きほぐされた、瑞々しい演奏が期待される。そしてピアノ協奏曲。こちらは震災直後の2011年4月に堂々来日し、ラヴェルの協奏曲2曲で聴衆を魅了した好漢ムラロの独奏が興味津々。このメシアンの権威のクリアなピアノが技巧的な細部を鮮烈に描出し、整頓されたバックと相まって、既存の楽曲像を一新する予感が漂う。
 “魔術師”的な作曲者と演奏者が揃ったコンサート。なかなか粋な年初めだ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2013年12月号から)

第567回 サントリーホール名曲シリーズ
★2014年1月7日(火)・サントリーホール

第5回 東京オペラシティ・プレミアムシリーズ
★1月8日(水)・東京オペラシティコンサートホール

第5回 読響メトロポリタン・シリーズ
★1月9日(木)・東京芸術劇場

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