高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

ベートーヴェンからベルクまで――ウィーンを彩った音楽の系譜


 毎回渾身の演奏を繰り広げる東京シティ・フィルだが、常任指揮者・高関健との公演はやはりひときわ違うものになる。新旧ウィーンの作曲家3人が並ぶ11月定期も、高関らしい仕掛けが感じられるプログラムで、興味が尽きない。

 最初は生誕250年のベートーヴェンから交響曲第2番を。作曲は1802年。フランス革命以降の変化が続く新世紀初頭、自身と世の中の活力を反映したのだろう、強い意欲と冒険心が発揮された、希望にあふれる傑作である。

 そして、一世紀を経てシンフォニーは規模も表現も拡大。その到達点となる存在がマーラーであり、特に彼の晩年の作品群だろう。1910年から取り組んだ最後の交響曲第10番の第1楽章“アダージョ”は、自身の生と愛に向き合った悲痛な情感が、濃密な旋律と斬新なハーモニーに込められた、感動的な一編である。

 その音響を推し進めたのが新ウィーン楽派の「十二音技法」だが、斬新な技法の中で熱い感情を表現したのがベルクである。1922年完成のオペラ《ヴォツェック》は重要な傑作で、1821年に起きた殺人事件をもとに、社会の枠にはまれなかった市民の悲劇を描きつくす。ベートーヴェン生前の社会の陰の姿が、ベルクならではの厳しくも美しい音楽で再現されるのである。

 高関と東京シティ・フィルの熱演と深い表現への期待は大きいし、ベルクでは20世紀作品を得意とするソプラノ半田美和子の歌も加わる。輝かしい開始から虚無感漂う終結まで、3作品で100年にわたるヨーロッパの光と影を体験できる、意義深い一夜となる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年9月号より)

*『クラシック音楽公演における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン』や会場の感染予防対策ガイドラインを鑑みまして、当初予定していたプログラムより公演内容を変更して開催となります。(9/25主催者発表)

(変更後)
曲目:マーラー/交響曲第10番よりアダージョ
   ベルク/演奏会用アリア「ぶどう酒」
   ベートーヴェン/交響曲第2番 ニ長調 作品36

詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
https://www.cityphil.jp/news/detail.php?id=219


第338回 定期演奏会 
2020.11/13(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp