アーティストメッセージ(11)〜大萩康司(ギター)

C)Shimon Sekiya

 「自粛」…何か悪いことをしてしまったかのような響きに疑問を抱きながらもコンサートは日に日に中止や延期となっているこの頃、皆様如何お過ごしでしょうか…楽しくはないですよね。

 今回のCovid-19は、全世界、全人類にわたって生活の全てに侵食しダメージを与えています。音楽界でも勿論、現状をみてみると主催者からオーケストラ、そしてソリストまで、コンサートのその日まで日々積み重ねてきたものが実現できない、という喪失感に呑み込まれそうになっています。日常の中に当たり前のように存在し、自由に手に入れることができた文化的な催物が、「不要不急な外出は避けてください」の一言でその存在が一気に遠くへ行ってしまった気持ちになりました。しかし同時に、演奏家として生かされたこれまでの20年間で経験したことのない空白の時間に、自分自身と向き合い、コンサートの舞台で演奏できることの有り難みを痛いほど感じることができました。

 これからどんな環境になっていくのかは計り知れないですが、知的欲求、文化的快楽を常に求める人の集まっているこの業界は、常に向上心を持っていて理想は限りなく高いので、悪くなり得ないはずです。今は希望を持ち続け、それを達成するチャンスが来た時のための準備期間なのでしょう。そのためには今の状態が長く続かないようにするために一人ひとりが現実に向き合い冷静に判断をし、淡々と行動することが何よりの近道なのだと思います。

 またコンサート会場で皆様にお目にかかれることを、心から楽しみにしております。
 皆様どうかくれぐれもご自愛ください。