アーティストメッセージ(12)〜イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)

C)Felix Broede

このコロナ禍によって、私たちは多くのことを考えさせられています。今この瞬間に世界で起こっていることは、私たち自身にその責任があるという事実に気付くべきでしょう。人の手によって作り出されたこの大惨事に、私たちはどのように立ち向かっていくべきかを考えながら、私は今自分の時間を過ごしています。最大の脅威は「日常生活に戻らなければならない」時に訪れるでしょう。決して以前と同じものに戻るべきではないからです。私は残念ながら、人類の持つ知恵と責務についてはあまり楽観的ではありません…。しかし私たち一人ひとりがここから教訓を得られるかどうか、見定めてみようではありませんか。

ところで、音楽は私にとって酸素のようなもので、目下バロック・ソロのプログラムに取り組んでいます。ベルリンのいつも使っているスタジオで録音する予定です。私の音楽に欠かすことのできないバッハは、今の私自身を慰めてくれるものです。先日ライプツィヒにある聖トーマス教会でバッハの無伴奏作品を録音する機会に恵まれました。アルテの収録で、もちろん無観客でしたが、このような状況でこのような経験ができたことは何か特別な意味があるのだと感じました。

コンサートでいつ演奏することができるのか、私たちにはまだ知る由もありません。さらに、以前のように世界中を旅することができなくなるかもしれない恐怖もあります。しかし希望を絶やさず、また日本を訪れ、皆さんと音楽を分かち合うことができることを心から願っています。

Isabelle Faust spielt Bach in der Thomaskirche
https://www.arte.tv/de/videos/097119-000-A/isabelle-faust-spielt-bach-in-der-thomaskirche/