【会見レポート】勅使川原三郎が4月より愛知県芸術劇場の芸術監督に就任

 ダンサー、振付家の勅使川原三郎が、4月より愛知県芸術劇場の芸術監督に就任する。任期は2024年3月までの4年間。1月30日、勅使川原のほか、愛知県文化振興事業団理事長の菅沼綾子、同劇場館長の丹羽康雄が登壇し、勅使川原の拠点である東京・荻窪のカラス・アパラタスにて会見を行った。

左より:菅沼綾子(愛知県文化振興事業団理事長)、勅使川原三郎(愛知県芸術劇場 芸術監督)、丹羽康雄(同劇場館長)
提供:愛知県芸術劇場(C)Naoshi Hatori

 中部圏を代表する芸術文化拠点、愛知県芸術劇場は、1992年10月の開館以来初めて芸術監督のポストを設け、ダンサー、振付家、演出家として国内外で高い評価を得ている勅使川原をそのポストに迎えることにした。そこには、「愛知県芸術劇場の特性を活かした事業展開を行うことにより、愛知、中部圏の全体の芸術文化のさらなる発展への貢献と、同劇場の国際プレゼンスの向上に寄与してほしい」(菅沼理事長)という狙いがある。今後、勅使川原は自主事業の方向性、年間のラインナップの策定、芸術監督によるプロデュース公演の実施などに携わる。

 就任について勅使川原は、「とても誇りに感じています。丹羽館長から約2年前にお話をいただいた時の最初の印象は『どうして?』。アーティストである私がその任に適しているか戸惑いがありましたが、すぐに、『もしできるのなら何ができるだろうか』とも考えました。アーティストではない立場で劇場に関わることに興味を持ち、自分にとって面白い機会になり得るかもしれないとお引き受けしました」と経緯を語る。

 勅使川原は同劇場でこれまでに、現パリ・オペラ座バレエ団芸術監督のオレリー・デュポンと共演したダンス公演『睡眠 ーSleepー』(2014)などに出演、「あいちトリエンナーレ2016」ではオペラ《魔笛》の演出を手掛けており、同劇場との関係も深い。今年3月までの1年間はアドバイザーとして、20年度以降の劇場主催事業の方向性についてサポートを行っている。

提供:愛知県芸術劇場(C)Naoshi Hatori

 劇場の印象については、「喜び、楽しみを創る人間は必ず責任をもち、舞台を提供する人間はそれに対する批判を受けなければならない。その上で、愛知県芸術劇場は、音楽、現代音楽、ダンスなどの各分野を受け持つ5名のプロデューサーがおり、それぞれがしっかりとした考え方をもち、上演作品への責任を持っています。様々な発想を許容し、高いポテンシャルで、スタッフワークが良く、しかも熱い。その明確な組織図に共感したことも、芸術監督をお引き受けした一つの要因です」と語る。

 また「芸術監督としての勅使川原と、アーティストとしての勅使川原をできる限り分けたい」とし、今後のラインナップには「勅使川原好みの作品をちりばめようとは思っていません。各プロデューサーの意見を尊重します。ただ“勅使川原カラー”を完全に消し去るつもりではありません。
 プロデューサーには責任を負っていただきたいし、私はそれを認証する重要な責任を負います。アーティストとしての私は常に創作を続けたい人間なので、アーティストの活動もやらせていただきたい。作品をどう展開し上演するか、スタッフには客観的な意見をいただきたいと思っている」と述べた。

 今後のプロジェクトについて、任期4年間の企画はだいたい考えており、随時発表していくと語る。まずは県内の芸術家と協力し、新しいプロジェクトを立ち上げたいと意気込む。
「劇場に関わることがどういうことなのか、それは“継続”です。そして劇場はいかに使いこなすかが大事で、その結果、使いやすくなる。地元の方たちにも劇場を使いこなしてほしいし、面白い場所にしたい。
 愛知県には優秀なダンサーを輩出している数多くのバレエ団がある。それらのバレエ団と協力し、今までになかった合同プロジェクトを実施します。芸術監督としての私がバレエ団の方々と一緒に仕事をして、新たな形を創りたいと思っています。
 そして、私が退任したあとも“継続”的に行われていくような、“やる価値のある仕事”を、今から仕掛けていかなければと考えています。実行するプロジェクトを絵空事のような、宙に浮いたようなものにはしません」

 なお3月12日、同劇場コンサートホールにて、芸術監督就任記念プレ事業として、協働する佐東利穂子、ヴァイオリンの庄司紗矢香と、新作『三つ折りの夜 詩人マラルメ「三つ折りのソネ」より』を上演する(東京公演は3月6日〜8日、東京芸術劇場にて)。その後、就任記念シリーズとして、7月から21年2月までに3演目の上演が決定している。

提供:愛知県芸術劇場(C)Naoshi Hatori

【公演情報】
芸術監督就任記念プレ事業
『三つ折りの夜 詩人マラルメ「三つ折りのソネ」より』
2020.3/12(木)19:00 愛知県芸術劇場 コンサートホール

出演:勅使川原三郎(演出・振付・照明・美術・ダンス)、佐東利穂子(ダンス)、庄司紗矢香(ヴァイオリン)

勅使川原三郎 芸術監督就任記念シリーズ
◎『白痴』
2020.7/17(金)〜7/19(日)愛知県芸術劇場(小)

出演:勅使川原三郎、佐東利穂子
◎『調べ― 笙とダンスによる』
2020.12/4(金)〜12/6(日)愛知県芸術劇場(小)

出演:勅使川原三郎、佐東利穂子(以上ダンス)、宮田まゆみ(笙)
◎芸術監督 勅使川原三郎『新作ダンス公演』
2021.2/21(日)〜2/23(火・祝)愛知県芸術劇場(小)


愛知県芸術劇場
https://www-stage.aac.pref.aichi.jp

  • La Valseの最新記事もチェック

    • ソウルのソさんを訪ねて | 川口成彦のフォルテピアノ・オデッセイ 第7回
      on 2020/02/17 at 01:00

      2018年、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで見事第2位に入賞し、一躍脚光を浴びた川口成彦さん。現在、アムステルダムを拠点に演奏活動をおこなう傍ら、世界中の貴重なフォルテピアノを探し求めて、さまざまな場所を訪ね歩いています。この連載では、そんな今もっとも注目を集める若きフォルテピアノ奏者による、ほかでは読めないフレッシュな情報満載のレポートを大公開します! 第7回 ソウルのソさんを訪ねて [&#8230 […]