フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー) & アンサンブル・アルタセルセ

まさに変幻自在! 麗しき美声の愉悦に浸る

フィリップ・ジャルスキー
C)Josef Fischnaller/Erato – Warner Classics

 フランスが誇るカウンターテナー、フィリップ・ジャルスキーの声には「飛翔感」がある。歌声がどこまでも高く登りゆくような、軽やかな浮遊性を備えているからだ。筆者は彼に二度対面したが、その際に「貴方の声は、天使の・・・翼を持っているような」と話すと、ジャルスキーはまず目を見開き、それからにこっと微笑んだ。「天使の声」と称されることにはどうも食傷気味であったけれど、「翼」の一語に心が動いたのだという。ジャルスキーの歌いぶりはまさしく、音楽の大空を自由に翔びゆく、広い翼を感じさせるものなのだ。

 この3月、そのジャルスキーが6年ぶりに来日し、手兵のアンサンブル・アルタセルセとともにリサイタルを開催する。曲目は18世紀のイタリア語の独唱曲をたっぷり揃えたもの。ヴィヴァルディで纏めた前半ではカンタータ「やめてくれ、もうやめてくれ」にまずは注目。心の昂ぶりが強烈なフレージングで表現されるだろう。一方、歌劇《オリンピーアデ》のアリア〈眠っている間に〉では逆に、ゆったりした恍惚の境地が展開する。また、後半のヘンデルでは、セレナータ「パルナッソス山の祭礼」のアリアが聴きもの。妻を失ったオルフェーオの悲痛な心境がリュートや弦の儚げな音色とともにゆっくりと滲みでる。また、歌劇《ラダミスト》の憤激のアリアでは、力強いコロラトゥーラが白い炎のように燃え上がるに違いない。実演でこそ伝わる「美声の羽ばたき」をぜひ聴き取ってみて欲しい。
文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2020年2月号より)

2020.3/13(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp

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