ヴィオラ界新世代の旗手
ヴィオラという楽器の歴史に、新たな1章を書き加える奏者となるかもしれない。フランス出身の若手ヴィオリスト、アントワン・タメスティは2004年に最難関として知られるミュンヘン国際音楽コンクールをはじめ、4つの国際コンクールを制した逸材。特に、ヴィオラ部門の優勝者をなかなか出さないミュンヘンのコンクールでは、聴衆賞や2つの特別賞も併せて受賞、大いに話題をさらった。そんな彼が、10年以上も親交のある盟友のピアニスト、マルクス・ハドゥラと臨むトッパンホールでのリサイタル。ヒンデミットのソナタやシューマン「おとぎの絵本」、武満徹「鳥が道に降りてきた」と、まさにヴィオラ名曲の粋というべき佳品に加えて、シューベルト「アルペジオーネ・ソナタ」やドビュッシー「亜麻色の髪の乙女」などの美しい旋律を、この楽器ならではの温かで豊かな音色に乗せて。どこか「縁の下の力持ち」的な扱いに甘んじている感のあるヴィオラの、ソロ楽器としての奥深い魅力に気づかせてくれるステージになるだろう。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2013年10月号から)
★11月24日(日)・トッパンホール
問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com