オリンピックイヤー年初にサロネン芸術の集大成と向き合う
2020年オリンピックイヤー年初のビッグイベントが東京芸術劇場で開催される。エサ=ペッカ・サロネン率いるフィルハーモニア管弦楽団による来日ツィクルスだ。これまでも度重なる来日で両者の息の合った演奏と、サロネンの他人には真似できない指揮ぶりは音楽ファンを唸らせてきたが、今回はその集大成ともいうべき内容だ。というのも20/21シーズンを最後にサロネンがフィルハーモニア管の首席指揮者を退任することが決まっているからだ。その退任前の熟した演奏を日本で聴くことができるのは実に幸運なことである。
3種のプログラムには、ラヴェル「クープランの墓」、ストラヴィンスキー「春の祭典」、ショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番(独奏:庄司紗矢香)」、マーラー「9番」など日本でも人気のある作曲家、作品がずらりと並ぶ。いずれもオーケストラの多様な色彩やダイナミズムを存分に楽しめるものばかりだ。マーラーは何度でも聴きたい作品だろうし(1/29)、庄司が登場する日のメインは、サロネンが若い頃から十八番とするストラヴィンスキーの「火の鳥」だ(1/28)。また、作曲家としても21世紀に入ってから急速に評価を高めているサロネン自身のチェロ協奏曲を、北欧の巨匠トゥルルス・モルクのソロで聴けるのも嬉しい(1/23)。彼の作品を未聴の方は「21世紀の作品!?」と一歩引くかもしれないが、初めて聴いても直感的に楽しめる聴きやすさが特徴だ。サウンドは21世紀のシベリウスとでも言いたくなるようなクールさがある一方、現代的な技巧に溢れている。ぜひこの機会にサロネンの新しい側面も楽しんでもらいたい。
文:山田真一
(ぶらあぼ2019年11月号より)
東京芸術劇場 海外オーケストラシリーズ
エサ=ペッカ・サロネン(指揮) フィルハーモニア管弦楽団
2020.1/23(木)、1/28(火)、1/29(水)各日19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296
https://www.geigeki.jp/