武満 徹のミニフェスティヴァル3日間

1年の終わりに、武満徹の音楽に癒しと希望を求めて

 大阪府堺市の新ホール〈フェニーチェ堺〉が、首都圏でも話題になり始めています。ハード、ソフトともに何かワクワクさせられる要素がありそうです。そのオープニングシリーズは2019年12月。コンセルトヘボウやホセ・カレーラスといったメジャーに混ざって、武満徹の諸作品が披露される「武満徹のミニフェスティヴァル3日間」が注目です。

武満 徹

 武満徹が亡くなったのが1996年。もちろん生前から著名ではありましたが、死後20年を経て、いよいよクラシックの音楽史の最新ページを飾る存在なのが明確になてきました。世界のメジャーオーケストラはこぞって武満作品を取り上げ、その指揮者も現代作品のスペシャリストではなく、ラトル、バレンボイムといった普通の巨匠たちが中心です。一方、「小さな空」「死んだ男の残したものは」などなどソングは、ジャンルを超えて、いつのまにかスタンダード・ナンバーになってきました。器楽作品でも例えばギタリストが20世紀作品で、最もとり上げるのはは武満によるものでしょう。このように「名実ともに隠れもない存在となった武満の現在の最良のプレゼンテーションをしよう」というのが〈フェニーチェ堺〉の意図のようです。クリエイティブな姿勢が素晴らしい。

左より:杉山洋一 撮影:山之上雅信、荒井英治、荘村清志 C)Hiromichi NOZAWA

 初日は作曲家・指揮者、杉山洋一のプロデュースによる初期の室内楽作品選です。後期の豊穣なメロディの管弦楽作品に対して、初期の室内楽は現代音楽っぽい尖った感じがするかもしれません。ですが、そこに後期にも通じる武満の天才はすでに溢れ出ており、だからこそ、バーンスタインはニューヨーク・フィルの創立125周年記念委嘱作品作曲家に、当時無名で、しかも東洋人の武満を選びました。それが「ノヴェンバー・ステップス」だったわけです。
国際的活躍著しい杉山洋一が選んだ作品及び、ヴァイオリンの荒井英治など演奏家はさすが。

 2日目は、音楽評論家・小味渕彦之のプロデュース。武満の声楽作品を高く評価し、注目する彼が選んだ取りまとめ役は合唱指揮者の西岡茂樹。西岡は三善晃や柴田南雄の信頼厚く多くの関西での重要な演奏会を彼らから任されています。現代作品の指揮に定評ある西岡ですがこれまで武満作品にはあまり取り組む機会はありませんでした。いよいよ満を持して難曲「風の馬」やポップシンガーも歌って皆に知られている作品の合唱バージョンに挑みます。
 メンバーはこの会だけのために選ばれた方々だそうです。
 
 最終日は、武満徹の愛娘、武満真樹がプロデュースし、自ら司会もします。ゲストはギタリストの荘村清志とアコーディオンのcoba。世代がちょっと違いますが、どちらも武満徹本人が友人として付き合っていた人たち。その3人による貴重なトークが前半で後半は荘村による武満ギター作品。世界の宝物のような「ギターのための12の歌」からとフォリオスなど初期作品も聞けるようです。
 
 これは確かに関西圏だけではなく、どこからでも行く価値がありそうですね。どうせなら泊まってまとめて拝聴がいいかもしれません。 
文:平井 洋


武満徹のミニフェスティヴァル3日間

会場:フェニーチェ堺

◎杉山洋一プロデュース 武満徹室内楽名品選
2019.12/27(金)19:00

出演:杉山洋一(指揮)、荒井英治(ヴァイオリン)、海野幹雄(チェロ)、近藤孝憲(フルート/ピッコロ)
   黒田亜樹(ピアノ)、吉野直子(ハープ)他
トーク:杉山洋一 & 荒井英治

曲目(予定)
武満徹:サクリファイス/ユーカリプスⅡ/スタンザⅠ/環(リング) 3人の奏者のための/遮られない休息Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ/ヴァレリア/悲歌

◎小味渕彦之プロデュース 西岡茂樹選抜指揮によるソング名品選
2019.12/28(土)15:00

トーク:小味渕彦之、西岡茂樹
出演:中島康子、西岡茂樹(指揮)、西岡茂樹選抜による特別編成のプロアマ約30名の合唱

曲目(予定)
武満徹混声合唱のための「うた」から
「小さな空」「小さな部屋で」「恋のかくれんぼ」「うたうだけ」
「翼」「島へ」「死んだ男の残したものは」「さようなら」他

◎武満真樹プロデュース 武満徹の友人たちトーク&ライブ
2019.12/29(日)15:00

出演:荘村清志(ギター)、coba(アコーディオン/作曲)、武満真樹(プロデューサー)
曲目(予定)
武満徹:「ギターのための12の歌」/同:「フォリオス」/ロンドンデリーの歌(アイルランド民謡)/「オーバー・ザ・レインボー」(H.アーレン)/「サマータイム」(ガーシュウィン〕/イエスタデイ(レノン/マッカートニー) 他

問:フェニーチェ堺072-228-0440
https://www.fenice-sacay.jp/
詳細については上記ウェブサイトでご確認ください。