ダン・タイ・ソン ピアノ・リサイタル

リリシズム溢れるロマン派の名曲とパデレフスキの秘曲を

C)佐藤寛敏

 ダン・タイ・ソンがショパン国際ピアノコンクールで優勝して、来年で40年となる。優勝以来幅広いレパートリーで音楽性を深め、同時に、ナショナル・エディションによるマズルカ全集の録音などにより、ショパンの解釈者としての評価を不動のものとした。そして今や、彼が育てた弟子たちが、新しい世代のショパンの解釈者としてショパンコンクールで結果を残している。

 そんなダン・タイ・ソンが今回届けるのは、ショパンの作品を中心としたプログラム。冒頭は、シューベルトのピアノ・ソナタ第15番「レリーク」。近年初めてシューベルトの録音をリリースしており、作曲家との距離もより縮まっている中での演奏になるだろう。

 ショパンからは、「舟歌」やバラード第1番のような人気曲に加えて、「マズルカ風ロンド」や「ボレロ」といった、演奏機会は多くないながらも、ショパンの若き日の祖国を思う気持ちが溢れ出すような名曲を演奏する。

 加えて楽しみなのが、ポーランドの大ピアニスト、パデレフスキの作品。ショパンの楽譜校訂を手がけた「パデレフスキ版」でよく知られる人物だが、近年作曲家としての功績も再注目されている。ショパンが没した約20年後のポーランドに生まれた彼によるこれらの小品は、シンプルで甘いメロディを持つ。ダン・タイ・ソンの手によって、素朴さの中に秘められた豊かな情感が浮き彫りになることだろう。

 多彩なプログラムで、ダン・タイ・ソン円熟の魅力が味わえそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2019年10月号より)

2019.10/16(水)19:00 紀尾井ホール
問:ヒラサ・オフィス03-5727-8830 
http://www.hirasaoffice06.com/

他公演
2019.10/5(土)大分/竹田、10/6(日)北九州、10/10(木)東京/武蔵野、10/13(日)福島、10/15(火)名古屋
※全国公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。