角野隼斗(ピアノ)

異色ピアニストの人生を変えたサントリーホールでのファイナル

 ピティナ・ピアノコンペティションは、予選から決勝までで参加者のべ約45,000組という、世界でも最大規模のピアノコンクール。あらゆる部門がある中で、ソロ部門の最上級である「特級」は、「最も国際コンクールに近い国内コンクール」を標榜している。実際にこれまでのグランプリ受賞者には、ロン=ティボー国際優勝の田村響、ショパン国際で第4位の関本昌平、フランツ・リスト国際優勝の阪田知樹らがいる。

「とても規模が大きく、課題曲の幅も非常に広いので、ピアノを弾く者にとっては“憧れ”のコンクールです」

 そう語ってくれたのは昨年の特級グランプリの角野隼斗。東京大学大学院に通いながら演奏活動を展開する異色のピアニストだ。過去にも中学・高校の数学科の教師をしながら特級グランプリに輝いた金子一朗もいるように、このコンペティションは非常に“公平性”が保たれていることも特徴で、真の実力者にグランプリが与えられる。

「小さい頃に出場して賞をいただいたこともありましたし、一度特級の演奏を聴きに行ったこともありましたが、特級は自分にとって雲の上の存在で、自分が受けるなんて想像もしていませんでした(笑)。しかし大学に入って再びコンクールに出場する機会が増えてきたところ、先生から特級を受けることを勧められ、もっとピアノと真剣に向き合ういい機会だと思い、参加しました」

 昨年からはファイナルの会場がサントリーホールとなり、規模が非常に大きくなった。このこともコンクール挑戦へのモチベーションに影響したという。

「もともとグランプリどころか、ファイナルに行けるとも思っていなかったのですが、1次、2次…と進むにつれて、“サントリーホールでコンチェルトを弾けるかもしれない”という想いが生まれ、それに向かって努力していきました。やはりサントリーホールでオーケストラと演奏できることは音楽家にとって幸せなことですからね。ファイナルには4名が出場し、コンチェルトをプロ・オーケストラと演奏します。お客様にとっても、コンチェルトを4人分サントリーホールで、しかもお得な価格で聴ける機会はなかなかないと思いますので、ぜひ今年もたくさんの方に聴いていただきたいです」

 今後も演奏と研究を両立し、作曲もしていきたいと語ってくれた角野。現在ワーナークラシックスからも演奏音源が配信されており、ますます活動の幅を広げていくはずだ。国際的なピアニストや新しい可能性を秘めた音楽家を輩出するピティナ・ピアノコンペティション。今年はどのような才能が登場するのか、ぜひ見届けてほしい。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2019年8月号より)


第43回 ピティナ・ピアノコンペティション特級

スケジュール
■二次予選
2019.7/29(月)~7/30(火)上野学園大学 石橋メモリアルホール

◎特級二次進出者(24名)
秋山紗穂 朝倉すみれ 厚木裕香 飯島聡史 石原広大 遠藤環 大塚菜々子  小倉茉緒 笠井萌 亀井聖矢  川地咲由里  黒木雪音  五条玲緒 佐川和冴  佐藤祐希 沢田蒼梧 鈴木椋太 千釜有美子 橋本智菜美 藤澤亜里紗 三上結衣 宮﨑真滉  山崎佑麻 山本正智子
(出場者プロフィール https://compe.piano.or.jp/event/final/news.html

■三次予選
2019.8/1(木) かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール

◎特級セミファイナル進出者
黒木雪音 藤澤亜里紗 秋山紗穂 佐川和冴 三上結衣 沢田蒼梧 亀井聖矢
※セミファイナル演奏順

■セミファイナル
2019.8/19(月) 第一生命ホール

■ファイナル
2019.8/22(木)18:00 サントリーホール

問:全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)03-3944-2481
https://compe.piano.or.jp/event/final/semifinalist.html

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