アフタヌーン・コンサート・シリーズ 2019-2020 後期

平日昼間の名演奏家&名曲尽くし


 平日昼間のコンサートがかなり定着してきた。シニア層のみならず、主婦や大学生、平日が休みの勤め人等々、聴衆もことのほか幅広い。しかも会場には、夜の公演とは違った明るさや寛いだ雰囲気が漂っている。この独特の“愉しさ”があるからこそ、“平日昼のファン”が増えているともいえるだろう。
 そうした中、著名アーティストの公演、名作にして本格派のプログラムを定期的に楽しめる「アフタヌーン・コンサート・シリーズ」が、高い支持を得ている。東京オペラシティで半期に4回行われる当シリーズは、多彩な人気演奏家が各々の個性に沿った名曲を披露する企画。2019-20後期も魅力的なラインナップが用意されている。

 11月は「舘野泉 バースデー・コンサート 2019」。左手のピアニストとして活躍を続ける舘野が、俊英奏者たち及び女優の草笛光子と共演する、興味津々の公演だ。舘野は今年11月10日に83歳を迎える“クラシック界のレジェンド”。誕生日の2日後に行われる本公演は、意欲的な演目が目を引く。まずは、生命の神秘に切り込んでいく、フィンランドの大家アホの「ピアノ五重奏曲“MYSTERIUM(神秘)”」と、金管12本、打楽器奏者3人を伴うレアな編成で不死や再生を讃える、アルゼンチン出身のエスカンデの「アヴェ・フェニックス“紅の風”」。いずれも世界初演ゆえに貴重な体験ができる。そして「銀河鉄道の夜」などの詩8篇が草笛の朗読とピアノで演じられる、吉松隆の「KENJI…宮澤賢治によせる」。同作は舘野も「涙が押さえられない」と言うほどなので、ぜひ触れてみたい。

 12月は「横山幸雄 ピアノ・リサイタル〜夢の時間への誘い〜」。人気・実力共に抜群のピアニストのソロをじっくりと味わう公演だ。時期に即した横山自作の「バッハ=グノーの『アヴェ・マリア』の主題による即興」で始まり、前半はシューベルトとショパンの即興曲や幻想曲、後半は即興演奏の名人でもあったリストの作品が並ぶ。“即興”がテーマのプログラムは意味深いし、「愛の夢」「ラ・カンパネラ」などの有名曲を聴けるのも嬉しい限り。透明かつロマンティックな横山の世界に酔いしれる、まさに“夢の時間”だ。

 20年1月は「ウィーン・シェーンブルン宮殿オーケストラ ニューイヤー・コンサート」。令和最初の新年を本場の楽団のウィーン音楽で祝う、晴れやかな公演だ。同楽団は、歴代皇帝一家ゆかりのウィーンの名所シェーンブルン宮殿を本拠とするオーケストラ。音楽的な水準の高さと統一されたサウンド、喜びに溢れた舞台で、地元でも際立った存在となっている。今回は、首席客演指揮者のヴィニシウス・カターに、ジェニファー・ラリー(ソプラノ)とウォルフガング・シュヴァイガー(バリトン)と二人のバレエダンサーが加わり、「皇帝円舞曲」「こうもり」「美しく青きドナウ」「チャールダーシュの女王」など、おなじみのウィンナ・ワルツやオペレッタの名曲を披露。これはもう楽しさ満載の極め付けコンサートというほかない。

 最後の2月は「長谷川陽子&三浦一馬&大萩康司〜情熱と哀愁のリベルタンゴ〜」。色彩的な音色と表情豊かな音楽で魅せる日本屈指のチェリスト・長谷川に、若手実力派バンドネオン奏者・三浦と、多様な音楽性が光る辣腕ギタリスト・大萩が絡む、ホットで躍動的な公演だ。プログラムは、長谷川&三浦の「剣の舞」、長谷川&大萩の「スペイン民謡組曲」、3人による「リベルタンゴ」等々、ワクワクするような演目ばかり。深みのあるチェロとラテンの香り漂う両楽器の競演も耳に新鮮だし、個性的名手3人の濃厚なコラボは、真冬に熱いひと時をもたらしてくれるに違いない。
 開演時間はすべて13時30分。ランチの後に極上の音楽を聴いて、充実の午後を過ごそう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年8月号より)

2019.11/12(火) 舘野 泉(ピアノ) バースデー・コンサート2019

2019.12/17(火) 横山幸雄 ピアノ・リサイタル 〜夢の時間への誘(いざな)い〜

2020.1/10(金) ウィーン・シェーンブルン宮殿オーケストラ ニューイヤー・コンサート

2020.2/21(金) 情熱と哀愁のリベルタンゴ
長谷川陽子(チェロ)&三浦一馬(バンドネオン)&大萩康司(ギター)

各日13:30 東京オペラシティ コンサートホール
シリーズ券 7/20(土) 発売 1回券 7/21(日) 発売
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
https://www.japanarts.co.jp/

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