欧米が視線を注ぐ、英国でいま最も勢いのあるアンサンブルを聴く
イギリス生まれの凄腕のクァルテットがやってくる。イギリスといえば世界でも最も早く市民コンサートが普及した国。それだけに質の高いアンサンブルがいつの時代でも活躍した。その流れは今に至っても同じ。1998年、イギリス・サフォークでの夏期ミュージック・スクールの室内楽コースをきっかけにして結成されたドーリック弦楽四重奏団も、耳の肥えた音楽愛好家に鍛えられ今や同国の誇る団体として世界で活躍している。英国外ではコンセルトへボウ、ウィーン・コンツェルトハウス、ベルリン・コンツェルトハウスなどに出演しているが、2017年のカーネギーホール・デビュー・コンサートが高い評価を得て、北米でも頻繁に演奏する機会が増えた。
レパートリーは古典から現代曲までと幅広い。時代の趨勢で“ディスク”の録音機会が多いとはいえないながらも、シャンドス・レーベルを中心に多くのCDをリリースしている。グラモフォン誌推薦盤のハイドン、それにシューベルトはその代表だがウォルトン、ヤナーチェク、コルンゴルト、ジョン・アダムズなどの作品も室内楽ファンを魅了している。
澄んだ音色と落ち着いた音楽の運びはいかにも英国流で、聴いていて心地よい。10月の来日公演では得意とするハイドンから弦楽四重奏曲第38番「冗談」、お国もののブリテンの弦楽四重奏曲第3番、それにベートーヴェンの第13番「大フーガ付」というクァルテット好きには垂涎のプログラムだ。第6回大阪国際室内楽コンクールの優勝者だけに、“恩返し”の来日ともいえるこの秋の公演に注目だ。
文:山田真一
(ぶらあぼ2019年8月号より)
2019.10/31(木)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp/
他公演
11/1(金)武蔵野市民文化会館(小)(0422-54-2011 7/21発売)