生誕200年に両雄の真価を再発見!
これまで“スッペとオッフェンバックだけの定期演奏会”があっただろうか? 都響の10月C定期は、この喜歌劇の2大作曲家の生誕200年を記念したプログラム。都響の立体的かつ豊穣なサウンドで、“楽しく美しい”両者の名曲を見直す、妙味十分のコンサートだ。
指揮はドイツの逸材フィリップ・フォン・シュタイネッカー。アバドの薫陶を受けた彼は、オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク、マーラー室内管等のチェロ奏者を歴任後、ピリオド楽器オーケストラ「ムジカ・セクロルム」を創立し、各地のオーケストラや歌劇場でも実績をあげている。《軽騎兵》《美しきガラテア》《天国と地獄》序曲などは小品として軽く流されがちだが、ここは、古楽やオペラに通じた指揮者ならではの新鮮なアプローチで、各曲の真の魅力を生き生きと伝えてくれるに違いない。
そして大きな目玉が、オッフェンバックのチェロ協奏曲の日本初演。チェロの名手として活躍していた若き日に書かれ、小太鼓が活躍する曲調から「軍隊風」と呼ばれる本作は、まさしくオペレッタのように華やかで変化に富んでおり、しかも技巧的な見せ場が満載されているので、聴けば誰もが楽しめる。ソロを弾くエドガー・モローは、1994年パリ生まれの俊英。チャイコフスキー・コンクール第2位ほか多数の賞を獲得し、ゲルギエフ、ソヒエフ等と共演している。本作は最新CDに録音し、鮮烈なソロを聴かせているだけに期待大。特に今回はチェロ奏者出身の指揮者のサポートも心強い。
耳も心も愉しい午後のひとときを、存分に満喫しよう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年8月号より)
第887回 定期演奏会 Cシリーズ
2019.10/2(水)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp/