市原 愛(ソプラノ)

オスカル役が実現できて幸せです

Photo:武藤 章

 年末に来日するトリノ王立歌劇場の《仮面舞踏会》でズボン役オスカルに抜擢された市原愛。軽やかな美しいソプラノの市原にはぴったりの役だ。実はこれがヴェルディ初挑戦。
「プレッシャーも感じていますが、初めて挑戦するヴェルディを、自分の声に合った役で歌わせていただけるのはすごくラッキーだと思っています。ヴェルディのドラマティックなソプラノだと、声質的に私が歌うレパートリーではありませんが、オスカルは自分の声にも向いている役なので、学生時代から勉強していました。ドイツの大学院時代に一度、出演者が急病で降板したので歌えないかと劇場から声をかけていただいたこともあるのです。ところがその日は私も風邪をひいていて…。残念だけどお断りしました。前からとてもやりたかった役なので楽しみです」
 ズボン役を演じるのも今回が初めてだ。
「ステージにズボン姿で出ること自体、ほぼ初めてです(笑)。オスカルは主役ではありませんが、ストーリー全体に関わる重要な役です。たとえば第3幕で、アメーリアとレナートが深刻な喧嘩をしているところに舞踏会の招待状を持っていって、なんとも空気の読めない感じでおどけてみたり。シリアスなこのオペラに独特の色を与えて、自分も輝けるシーンがあるので、やりがいがあります」
 昨年6月にはこの《仮面舞踏会》の新演出初演に立ち会うためにトリノを訪れた。
「プレミエの1週間ぐらい前から、お稽古も見せていただきました。私もコレペティートアの方にレッスンしていただいたのですが、イタリア語のディクションをイタリア人の方にレッスンしていただくのも初めてだったぐらいですから、新しい発見がいっぱいありました。今回の《仮面舞踏会》は、トリノの劇場内部と同じで赤が基調になっています。全体にシンプルなのですけれど、最後の舞踏会の場面で急にぱあーっと華やかになって、客席から歓声があがったぐらい!あれは観どころですよ。私も楽しみです」
 その舞踏会シーンでは(トリノでの演出どおりなら)オスカルに、あっと驚く演技が振られているそう。
「ちょっとびっくりすると思いますよ。歌手がこんなことやっちゃうんだ!?ということをやるので、絶対に見逃さないでください(笑)」
ヒントは、(1)小学生の時はできた、(2)それ以来やったことがない、(3)だから今できるかどうかわからない、だそう。うーん、何だろう。いろんな意味で市原オスカルから目が離せない!
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2013年8月号から)

トリノ王立歌劇場 ヴェルディ《仮面舞踏会》
★12月1日(日)、4日(水)、7日(土)・東京文化会館
問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp
ローソンチケット0570-000-407 http://l-tike.com/torino2013
テレビ東京チケット事務局03-3435-7000

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