ロジェ・ムラロ(ピアノ)

鋭敏な感性と変幻自在なタッチ

C)Jean-Baptiste Millot

 今年還暦を迎えたロジェ・ムラロだが、トッパンホールではこれまでにもメシアン「幼な子イエスにそそぐ20の眼差し」全曲やラヴェル・ピアノ曲全曲演奏など大型プロジェクトを成功に導いてきた。どんな音楽も独自の光で照らしだす鋭敏な感性と変幻自在なタッチ。今回の公演でもそのエッセンスが堪能できそうだ。

 まずはモーツァルトのソナタ第8番(K310/300d)。細かく差異化し弾き分ける技術は、モーツァルトのシンプルな音楽にも陰影を与え、行間に潜むパッションを掘りあてるだろう。続く「鏡」はラヴェルが当時のパリの画家や作家ら、様々なジャンルの芸術家と関わる中で生まれた。華麗な技巧で描かれていく幻想は、夜の妖しいエロスからピエロの哀愁にまで及ぶ。腕に覚えのあるムラロにはぴったりの難曲だ。

 後半は短く性格の異なる曲が重ねられていくショパン「24の前奏曲」。多彩なタッチと大曲をまとめる力が一つながらに生きてくる曲だ。カラフルな詩集のページを繰るように、小さな詩情が大きな波動へと束ねられていくことだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年6月号より)

2019.6/14(金)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com/

  • La Valseの最新記事もチェック

    • ダヴィデ・ルチアーノ(バリトン)| いま聴いておきたい歌手たち 第12回 
      on 2020/01/17 at 03:20

      text:香原斗志(オペラ評論家) スターダムをのし上がりつつあるバリトンの大器 20世紀までは、バリトンなら彼だ、と太鼓判を押せる歌手がいつも、それも複数いたように思うが、ここしばらくの間、20世紀の生き残りであるような大御所を除くと、絶対的な指標になるようなバリトンがいなかったように思う。ダヴィデ・ルチアーノこそは、久々に現れた大器というべきだろう。 2017年8月、ペーザロのロッシーニ・オペ [&#8230 […]