古楽の巨匠と作り上げるロマン派作品の新しい姿
新日本フィルは以前から、古楽や古典を得意とする名指揮者との相性がすこぶる良い。特に2000年代のゲルハルト・ボッセとフランス・ブリュッヘンというふたりの大家との共演は、古典演奏の真髄を示すものだった。近年も鈴木秀美やトン・コープマンら、古楽・古典の名匠と成果を挙げ続けている。
そしてこのたび登場するのは、古楽の世界的巨匠フィリップ・ヘレヴェッヘ。バッハをはじめとした多くの古楽や宗教曲の名録音で知られる彼は、世界トップクラスのモダン・オーケストラとも共演を重ね、20世紀作品まで手掛ける才人である。日本の団体との共演機会は稀少で、待望の好機となる。
演目はメンデルスゾーンとシューマン、初期ロマン派の巨匠の3曲。古典的な端正さと感情に訴えるロマンが両立した名品ぞろいで、ヘレヴェッヘのもと清新にして細部まで磨かれた、しなやかな演奏が実現するに違いない。特に、ベートーヴェン的な構築性に濃密な情感があふれる名作、シューマンの交響曲第2番はこれまでのイメージを刷新するような名演の期待大。彼が作り上げる、ヴィブラートを抑えた澄んだ響きは、新日本フィルにとっても長年培ってきた奏法であり、同楽団の面目躍如となる演奏会になりそうだ。
演奏会冒頭を飾るのはメンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」。仲道郁代がソリストを務めるシューマンのピアノ協奏曲も注目だ。彼女にとってシューマンは要所で演奏してきた大切な作曲家。近年はフォルテピアノでの演奏でも第一線を走るなど円熟味を増す仲道が、ヘレヴェッヘとの共演で新たなシューマン像を創出する。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年5月号より)
第606回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉
2019.5/31(金)19:00、6/1(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp/