葵トリオ

ミュンヘン国際音楽コンクール優勝記念のアルバムを堂々リリース

©Naoya Ikegami/Suntory Hall

 昨年9月、超難関・ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で優勝し、一躍、世界中の注目を集めてから約半年。ピアノ秋元孝介、ヴァイオリン小川響子、チェロ伊東裕による「葵トリオ」が、ハイドンとシューベルトを収録した新譜(マイスター・ミュージック)をリリースする。「この3人でなければ、常設団体でなければ、聴かせられない演奏を」。彼らの言葉と快演には、“真の音楽”を追究する決意が滲む。

 「嬉しい半面、予想だにせず、『これからどうしよう』とばかり考えて…」とミュンヘンでの快挙の瞬間を語る秋元。小川は「本選で大好きなシューベルトを弾けるのが嬉しく、その幸せを噛み締めていました。発表の時は、よくわからないままお辞儀して…」。伊東も「半信半疑で…本当に嬉しい一方で、『これからが大変だ』と不安も大きく、複雑でした」と振り返る。

 新アルバムは、ハイドンの後期作品とシューベルトの第2番を併録。「前者は1次予選の最初、後者は本選の最後に演奏したので、まさに記念盤」と秋元。古典派とロマン派、それぞれに特有な様式を踏まえる一方、3人の息もぴたり。鮮烈な快演が「ホールの音響も大変良く、のびのびと演奏できたのでは」との小川の言葉を裏付ける。

 特にハイドンに関して、「本当に古典は難しい…」と秋元は苦笑。「意識しているのは、音の密度を濃くし過ぎないこと。ただし、音量を小さくしたり、主張を控えたりという意味でなく、演奏の際に響きの配分やバランスを調整し、ピアノの響きの空間へ、弦楽器が入ってきやすい余裕や空間をいかに作り出すか、なのです」と説明する。

 3人の苗字の頭文字を冠し、全員が関西出身のため、「地元でコンサートができれば」との軽い気持ちで始めたトリオ。しかし、今や「個性の調和と衝突、両方が楽しめる」(秋元)、「精密な合わせから、作品の魅力が倍増してゆく」(小川)、「弦楽四重奏よりもソリスト的な要素が多く、自由度が高い」(伊東)と、その醍醐味を語る。仲間としてだけでなく、互いを演奏家としてリスペクト。深く信頼し合っている姿も印象的だ。

 4月末からは、3公演を重ねる国内ツアーがスタート。「各パートが独立しつつ、一つの巨大な建造物を構築する。本当に驚くべき音楽」(秋元)と評する、ベートーヴェンを軸に、アイヴズにマルティヌーと近現代作品も演奏。「なかなか演奏の機会に恵まれない作品の紹介も、常設トリオの役割」(同)と力をこめる。

 「臨時編成とは全く違う、常設でなければ聴けない音楽を。多くの人にトリオの魅力を知らせる活動を」と秋元が言えば、小川も「トリオといえば『葵』と言っていただけるよう、成長を続け、音色と音楽を突き詰めたい」。そして、伊東も「良い演奏は、必ずお客さんの心に残る。もう一度聴きたい、と思ってもらえる演奏を。そして、いつかは日本を代表するピアノ・トリオに」。3人の視線の先には、同じ場所がある。
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年5月号より)

葵トリオ 国内ツアー
2019.4/24(水)14:00 フィリアホール(完売)
4/27(土)13:05 びわ湖ホール(中)(077-523-7136)
5/1(水・祝)14:00 トッパンホール(完売)
※葵トリオの最新情報は下記ウェブサイトでご確認ください。 
https://aoitrio.com/

CD『シューベルト:ピアノ三重奏曲第2番 他』
マイスター・ミュージック
MM-4055
¥3000+税
4/25(木) 発売