邦楽と洋楽のコラボで誘う未知への旅
2016年に始まった紀尾井ホールの「午後の音楽会」は、クラシック音楽と邦楽が真正面から向かい合う人気シリーズ。邦楽専用の「紀尾井小ホール」(5F)を持つ紀尾井ホールならではのコラボ企画だ。2019年度は「旅」を全体のキーワードに、「起点」「途上」「世は情け」「人生」と、ドラマティックなテーマ構成の全4回。人生とは曲がりくねった道をゆく旅なのか。毎回「旅」にまつわる作品がプログラムに加わる。
旅立ちとなる4月の第1回「起点」は、ヴァイオリニストの篠崎史紀と、邦楽囃子笛方の鳳聲晴久(ほうせいはるひさ)の競演。篠崎はこのシリーズに毎年出演しているレギュラー格。海外に出ることで日本人としてのアイデンティティを強く意識するようになったという。燕尾服の裏地が着物の生地だったり、ヴァイオリンのテールピースが漆の装飾だったり、まさにこのシリーズにうってつけのアーティストだ。
プログラムはまず清元の「道中双六」。双六遊びで東海道五十三次をゆくさまを語る浄瑠璃だ。クラシックでは、ドヴォルザークがニューヨークに渡った時期の作品である「ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ」(ピアノ:入江一雄)。そして両者のコラボ曲が、江戸獅子舞の「寿獅子」(笛:鳳聲晴久、ヴァイオリン:篠崎史紀、囃子:望月太津之、望月秀幸)。門出を祝う縁起物。典型的な祭囃子と篠崎の即興的なヴァイオリンが、ジャム・セッションのようなスリリングなアンサンブルを聴かせてくれるに違いない。
他の3公演では、鶴澤三寿々(義太夫三味線)とコハーン・イシュトヴァーン(クラリネット)、仲村逸夫(三線)と高木綾子(フルート)、長須与佳(薩摩琵琶)と川本嘉子(ヴィオラ)が共演する。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2019年4月号より)
2019.4/18(木)「─起点─」、7/4(木)「─途上─」、
10/17(木)「─世は情け─(行逢ば兄弟)」、2020.1/16(木)「─人生─」
各日13:30 紀尾井ホール(小)
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp/