ギター伴奏で深まるシューベルトの詩情
ひと声聴いただけでため息が出る美しい声。現代を代表するリリック・テノール望月哲也がギター伴奏でシューベルトの三大歌曲を歌うシリーズも、「冬の旅」「美しき水車小屋の娘」と続き、いよいよ最終回の「白鳥の歌」だ。ギター伴奏による「白鳥の歌」の全曲演奏はほかに前例がないという。望月とともにそれに挑むのは、パリ音楽院で学び数々の国際コンクールの入賞歴を持つギタリスト松尾俊介。ギターの繊細なサウンドは、たとえばピアノに比べて、声の色や歌の表現の幅をいっそう自由に広げてくれるはず。それはまさにシューベルトの世界。もとより、美しい声に任せて心地よい抒情に溺れるのではなく、詩と音楽の深層をえぐる、彫りの深い歌を聴かせる望月のこと。「白鳥の歌」でいえば、第8曲〈アトラス〉の苦悩や絶望の表現は、まるでオーケストラのような劇的な伴奏をギターでどう描くのかという期待とともに、大きな聴きどころとなるだろう。注目の公演。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2019年2月号より)
2019.4/6(土)17:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
https://www.hakujuhall.jp/