阿部千春(ヴァイオリン/コンチェルト・ケルン)

古楽の精鋭集団が新進カウンターテナーと共に来日!

 ドイツの名門古楽オーケストラのコンチェルト・ケルンがカウンターテナーのヴァレア・サバドゥスとともに来日し、映画『カストラート』の主人公ファリネッリの得意としたバロック・オペラのアリアを披露する。
 オーケストラや公演の聴き所について、同オーケストラのヴァイオリン奏者、阿部千春に聞いた。ちなみに阿部はトロッシンゲン、バーゼル、ケルンでバロック・ヴァイオリンなどを学び、2000年に入団。現在はライブラリアンの任務も担う。

 「コンチェルト・ケルンは運営から選曲、解釈まですべて合議制の上、毎回全力を尽くして最高のパフォーマンスをすることをモットーにしている」とのことだが、実際には?
「今回来日する平崎真弓の他、佐藤俊介ら4人がコンサートマスターを、そして18年12月からチェロのアレクサンダー・シェルフが芸術監督を務めています。芸術監督は音楽的な事柄に責任を持ちます。たとえば活動方向の舵取り、コンサートのプログラムや楽器編成、共演者の選択、スケジュール管理などですが、公演後に各セクションからの意見を取り入れて演奏内容や質の向上に努めることも大事なポイントです」

 リハーサルで意見が分かれた場合はどうするのか。
「それぞれの言い分を皆で試してみて、それがどのような理由で出てきたのか、実際にそれがどのような効果を生むのかを確認します。長年一緒にやっているので一致することが多いのですが、それでも意見が纏まらない場合は、多数決かコンサートマスターの助言で決定します」

 以前、指揮者なしのベートーヴェンの「英雄」交響曲のとてつもないエネルギーに満ちた演奏に仰天した。
「今でもハイドンやモーツァルトの交響曲、ベートーヴェンの『運命』までは指揮者なしでもやりますよ。それには各人が曲を理解し、積極的に音楽作りに参加しなければなりませんし、それだけリハにも時間を掛けます。コンマスや楽員の一人が解釈を担当し、それを土台に作り上げていきます」

 今回の聴き所は?
「サバドゥスの魅力は非常に澄んだ美しい高音にありますが、ここ2、3年で声に円熟味と力が加わり、音楽的な内容も深まりました。人柄も素晴らしい。私たちはたとえ伴奏でもアクティヴな音楽を目指していますが、彼は私たちと一緒に音楽を作ろうとしてくれる。ライブラリアンとして楽譜の準備も行い、彼とともに作り上げたプログラムですので、それを日本の皆さまにライヴでお届けできるのは、個人的にもとても嬉しい。今回はいくつかのアリアでファリネッリが歌ったとされるカデンツァも披露します。それも聴き所の一つと言えるでしょう」
 公演を楽しみにしていよう。
取材・文:那須田 務
(ぶらあぼ2019年2月号より)

ヴァレア・サバドゥス&コンチェルト・ケルン 
2019.2/13(水)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 
http://www.kioi-hall.or.jp/

※他公演(2/9京都、2/10姫路、2/11武蔵野)については下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.allegromusic.co.jp/