リュウ・シャオチャ (呂 紹嘉)(指揮)

台湾のクラシック・シーンを牽引するマエストロ

C)Yung nien Wang

 近年、目覚ましい成長を遂げたアジア諸国のオーケストラの中にあって、特に高い評価を受けているのが、台湾フィルハーモニック(台湾では国家交響楽団の名称)。音楽監督を務めるリュウ・シャオチャに率いられて2019年春に来日、熱いサウンドを披露する。
 「日台は物理的な距離だけでなく、精神的にも近い。西洋音楽を学ぶのに同じ過程を経ただけに、私たちの音楽にも、より深いレベルで共感していただけるはず」。思い入れを込め、リュウは語る。
「まだ発足して32年と若いオーケストラながら、今や台湾のクラシック・シーンを代表する存在になっています。創造力が豊かで大らか、そして勤勉な楽員たちは、文化の万華鏡のような台湾の文化や社会そのもの。プログラミングや演奏の上では、西洋の文化と関係を保ちつつ、私たち自身の伝統や個性も、常に意識しています」
 1986年に台湾の国立楽団として設立。2005年に国家表演芸術センターの専属となり、14年には国家音楽庁(ナショナル・コンサート・ホール)の座付き楽団に。ウィーンをはじめヨーロッパやアジアでもツアーを敢行し、国際的に高い評価を得ている。10年から音楽監督に就任したリュウは、欧米で研鑽を積み、1994年にチェリビダッケの代役として、ミュンヘン・フィルを振ってデビュー。ハノーファー州立劇場の音楽総監督などを歴任した、実力派の指揮者だ。
「クラシック音楽は、もはや西洋だけのものではありません。音楽は言語よりも、人間の感情を表現しうる直観的かつ自然な方法。音楽作品は時空を超越し、作曲家の意図さえ理解すれば、あなた自身の経験を加えてよいのです。さらに、私たちアジア人には、瞑想的であったり、“空間を残す”ように静寂性を重んじたり、一度に全てを語り尽くさない、ユニークな芸術性を持っています。時に、西洋の音楽家を凌駕する解釈も可能なのです」
 今回の来日公演は、シベリウス「交響曲第2番」を軸に。
「シベリウスは、独墺など伝統的な音楽先進地から離れたフィンランドで、苦心の末に個性的な響きを形創りました。今の台湾は、当時の彼の周囲の状況と似通っていて、私は、その作品から大きな霊感を感じ取ります」
 そして、2018年9月にインディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクールを制した俊英リチャード・リンを独奏に迎えて、メンデルスゾーンの名協奏曲も披露する。さらに、芥川也寸志の「交響管弦楽のための音楽」と、日本で学んだ台湾人作曲家、江文也が、1936年にベルリン・オリンピックの芸術コンペで高い評価を受けた「台湾舞曲」も。
「芥川の作品からは、日本の精神を読み取ることができます。一方、私たちと強い絆で結ばれている江の作品は、伝統的な中国文化と日本文化の影響のもと、独自の音楽を創り上げ、台湾を代表する作曲家となりました」
 ステージにあっては「洗練された選曲、深みのある解釈、新鮮さ」の3点を常に心がけているというマエストロ。
「オーケストラは西洋の産物ですが、今や、我々アジア人独自の感性をインプットしてゆくべき時代が到来しています。そのいくつかは達成できましたが、まだ充分ではありません。これこそが、私の夢なのです。まだまだ、なすべきことは残っています」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年1月号より)

台湾フィルハーモニック 2019日本ツアー
2019.4/30(火・休)14:00 東京文化会館
2019.5/6(月・休)14:00 大阪/ザ・シンフォニーホール
問:アスペン03-5467-0081 
http://www.aspen.jp/

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