市民とアーティストが作り上げる宇宙と命の物語
神奈川県の大和市文化創造拠点シリウスは、年齢を問わず広く市民に芸術文化や生涯学習の素晴らしさを届けるための場として、芸術文化ホール・図書館・生涯学習センター・屋内こども広場の4つを持つ複合文化施設。11月3日に、開館2周年を記念する「『宙(そら)』〜紡ぐ言の葉〜」が開催される。市民から星や宇宙にちなんだ思い出や言葉、曲を募集。『食堂かたつむり』などで知られる作家の小川糸がそれをもとにオリジナルの物語を書き下ろし、そこに公募で集められた合唱団による合唱が組み合わされる。作品の朗読は篠原ともえ。かつて“シノラー”ブームを巻き起こし、一世を風靡した篠原は、現在“宙(そら)ガール”としてラジオ番組のMC、プラネタリウムでのライヴや解説などで活躍。また、18年内閣府が主催する宇宙開発利用大賞委員にも抜擢されている。
「子どもの頃から星をよく眺めていました。じっくり見つめると赤や青の色があることに気が付き、星を覚えるなど、夢中で観測していました」
「星はお友達」という篠原は、学生時代は天文部で星の観察に没頭。そんな篠原だけに、今回宇宙をテーマにしたコンサートへの参加はとても嬉しかったという。特に、タイトルの「宙」を「そら」と読ませる響きが気に入ったようだ。
ステージでは、幅広い世代に愛される「見上げてごらん夜の星を」や、合唱コンクールでもおなじみの「COSMOS」など、市民から募集した宇宙や星にまつわる曲が合唱によって歌われながら、物語が展開していく。実は篠原は、小学校時代、合唱コンクールに指揮者として参加した経験があるという。「みんなで心を一つにして一緒に歌う時間は、今でも忘れられないスペシャルな思い出です」と、合唱に対する熱い思いも語ってくれた。また、エリック・サティの「ジムノペディ」が好きだというのでその理由をたずねると、「星の瞬きのような旋律で、心が落ち着くから」という答えが。さすが“宙ガール”、生活の様々なシーンで星を満喫しているようだ。
朗読というのは、簡単なようでいてとても奥の深い世界。ただ書かれた言葉を「読む」だけでは、作者が作品に込めた思いはおろか、物語の内容すらも伝わらないことがある。聴き手に「言葉を伝える」ために、篠原ともえが普段から心がけていることをたずねてみると、ひとこと、次のような答えが返ってきた。
「想いを手渡しするように、心を込めて丁寧に届けたいです」
9歳の少女を主人公とした、心震える命の物語。言葉と、歌とが重なるハーモニーがどんな世界を描き出すのか。楽しみに待ちたいと思う。
取材・文:室田尚子
(ぶらあぼ2018年11月号より)
市民とつくる合唱・朗読作品「宙(そら)」〜紡ぐ言の葉〜
2018.11/3(土・祝) 15:00 やまと芸術文化ホール(大和市文化創造拠点シリウス内)
問:やまと芸術文化ホール チケットデスク046-263-3806
http://yamato-bunka.jp/hall/