寺神戸 亮(指揮/ヴァイオリン)& 小野寺修二(演出)

ピリオド楽器の響きと、想像性をかきたてる演出との邂逅


 今年の北とぴあ国際音楽祭では、傑作《ウリッセの帰還》がセミ・ステージ形式で上演される。この音楽祭でモンテヴェルディのオペラが取り上げられるのは2007年の《オルフェーオ》以来。指揮者・ヴァイオリニストとして音楽祭を牽引してきた寺神戸亮と演出を担当する小野寺修二に聞いた。
 まずは寺神戸になぜ《ウリッセ》なのかを。
「モンテヴェルディの作品はどれも素晴らしくて、現存する3つのオペラはすべて上演したいと考えていました。北とぴあでは最初に《オルフェーオ》を上演しましたが、他の作品もずっとやりたかった。今回《ウリッセの帰還》を取り上げるのは、日本で上演の機会が少なかったからです」
 《オルフェーオ》は観世流シテ方能楽師の野村四郎(共同演出:笠井賢一)を演出に迎えて大きな成功をおさめた。今回の《ウリッセ》では、カンパニーデラシネラを主宰し演出家・振付家として幅広い活躍をしている小野寺修二が起用された。オペラ初演出が注目される。
 音楽祭でいろいろな“出会い”を探してきたと寺神戸は語る。
「これまでも宮城聰さんや粟國淳さんに参加していただきました。今回はギリシア神話が題材です。《ウリッセ》の複雑な世界を、現代の観客にうまく見せられる方を探して、小野寺さんと出会いました」
 モノディ様式を用いてオペラという新しい文化を拓いたモンテヴェルディ。モノディ様式の最大の特徴は“自由さ”だと語る寺神戸。音楽の自由さと、表現の自由さがどのようにマッチするか、小野寺修二は次のように考える。
「僕はパントマイムをベースにして表現をつくるのが仕事ですが、いままでダンスや演劇など、色々な分野の方と出会ってきました。今回、音楽と身体表現をどう合わせようかと考えています。《ウリッセ》はオペラの最初期の作品ですので、まだ定型のようなものがなく手探りの状態で始まったのだろうし、いきなり神様が出てきて、内容は不条理ともいえますから、僕がやっているマイムとか、ある種の想像力を持ってプラスしていく作業に向いています」
 小野寺はインタビュー時、まさに世田谷パブリックシアター主催の現代能楽集Ⅸ『竹取』を稽古中。
「能楽の方と話していると、やり方は違っても目指すところは同じで、できるだけシンプルに見立てていく。今回も奇をてらうことはしません。きっちりセットを作りこむより、シンプルに作ってお客様の想像力を刺激したい」
 《ウリッセ》にはデラシネラ作品によく出演している2人のパフォーマーが出演するが、どのような役割を担うのだろうか。
「周りの人が動いているよりも、じっくりと歌手の方の歌を聴いていただく方がいい作品ですが、長い上演時間のなかでアクセントとなるものが必要かもしれません。歌手にも動いてもらいますが、足りない部分を埋めるのに男女のパフォーマーが参加します。セミ・ステージ形式ですから、歌手が役に必ずしもなりきらなくてもいいという構造で、一方でパフォーマーが動くとか、歌い手に対してパフォーマーの身体が同化していくというやり方が可能ではないか。音楽で始まって音楽で終わる大きな枠組みのなかで、物語を旅してもらえれば、と」
 小野寺はオペラを、様々な表現が集まった最終地点にある総合芸術だと捉えている。
「初めて手がけることに緊張はしますが、お客様に驚いてもらって、楽しんでいただければと考えています」
 寺神戸亮の率いるレ・ボレアードとエミリアーノ・ゴンザレス=トロの題名役をはじめ、湯川亜也子のペネーロペ、マチルド・エティエンヌのメラントなど錚々たる顔ぶれによる演奏が、小野寺修二の柔軟な表現と出会ってどんな舞台が実現するのか期待したい。
取材・文:寺倉正太郎
(ぶらあぼ2018年11月号より)

北とぴあ国際音楽祭2018
モンテヴェルディ《ウリッセの帰還》(セミ・ステージ形式)
11/23(金・祝)17:00、11/25(日)14:00 北とぴあ さくらホール
問:北区文化振興財団03-5390-1221 
http://www.kitabunka.or.jp/

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