阪 哲朗(指揮) 紀尾井シンフォニエッタ東京

ヨーロッパの香りとたっぷりと日本の四季を

 紀尾井シンフォニエッタ、2013/14シーズンは初共演となる阪哲朗のタクトで幕を開ける。
阪はドイツ語圏の劇場を渡り歩いてステップ・アップした、いわば現場たたき上げタイプ。ベルリン・コーミッシェ・オーパーなどで指揮棒をとり、現在はレーゲンスブルク歌劇場の音楽総監督を務めている。一つの劇場を任されるということは、音楽面に加え企画力やコミュニケーション能力、細々とした雑事の対応に至るまで様々な力を求められる。こういう指揮者はヨーロッパ文化の特性を日常レヴェルで吸収している。そのリードからも、本場の香りが自ずと匂いたつことになる。
今回の公演では、ドビュッシー(「子供の領分」カプレ編曲版)、ルーセル(「小管弦楽のためのコンセール」)といったフランスの作曲家に、スイスの作曲家マルタンの「7つの管楽器とティンパニ、打楽器、弦楽器のための協奏曲」が続く。阪の守備範囲からは少々ずれるように思うかもしれないが、彼のコンサート・デビューはフランスで、劇場キャリアもスイス(ビール市立劇場)でスタートしている。紀尾井シンフォニエッタの腕っこきたちを束ねて、精妙なニュアンスを表現してくれるはずだ。
この日は我が日本の四季を題材にした組曲「歳時」も初演される。作曲家の蒔田尚昊(まいたしょうこう)は、ウルトラセブンの主題歌などでおなじみの冬木透といったほうが通りがいいかもしれない。伝統的なメロディーやリズムが織り込まれたこの曲は、昨年の同団アメリカ公演で一部がアンコールとして演奏されており、客席の大きな共感を呼んだというから大いに期待したい。

文:江藤光紀
(ぶらあぼ2013年8月号から)

第91回 定期演奏会
★9月6日(金)、7日(土)・紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター 03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp