関本昌平(ピアノ)

ショパンの憧れの心がエスプレッシーヴォを呼ぶのです

C)ザ・シンフォニーホール

 平日午前中に解説と演奏で音楽を満喫できる「朝活コンサート」が5月にスタート。ショパンの名曲をテーマとした今回のVol.2では、野本由紀夫(解説)と飯田有抄(司会)によるプレセミナーに続き、2005年ショパン国際ピアノコンクール入賞者の関本昌平が登場する。
 曲目は「スケルツォ、バラード、ワルツ、ポロネーズなどをまんべんなく取り上げる名曲オンパレード」。関本が好きな作品ばかりだという。
「ショパンの音楽は色彩と空想の世界でできているから、すっと心に入ってくる。朝、楽な気持ちで聴くにはぴったりです」
 20歳でコンクールに入賞してから13年。ニューヨーク留学などを経て視野を広げ、自身の活動を見つめ直す中、ショパンから距離を置いた時期もある。
「他の作曲家も好きなので、入賞したことで“ショピニスト”のイメージが定着することは避けたいと思いました。それに、コンクールを目指してショパンばかり弾いていたあと、若いうちに先生から離れて演奏活動をするようになり、なぜその作品を弾くのか、なぜピアノを弾くのかを、より自信をもって説明できるようになりたいとも感じて。これから何を表現していくべきか、その方向性を、自分の意志で見つけたかったんですね」
 さまざまな作曲家と向き合った今、ショパンの魅力を再認識しているという。
「届きそうで届かない、その切なさ、時には情けなさが表れているところが心にぐっとくるのです。例えばバラード第1番なら、孤独な苦しみから、求めるものへの憧れ、それを手に入れることへの妄想があり、最終的に目的は達成されずに終わります。好きだと言っているのに伝わらない、でもだからこそ次の感情が生まれ、表現がエスプレッシーヴォになるわけです。特に音が少ないゆっくりしたパートは、妄想の世界が広がるところですね」
 現在、後進の指導でも多忙な関本。もともと「有名になることに興味がない」という彼が目指すのは、職人的に音楽を追求するタイプのピアニストだ。
「もちろん聴いてくださる方には感謝しているのですが、僕には、人のために演奏するという意識があまりありません。聴かせることにばかり気持ちがとらわれると、芸術家として壊れていくのではないかと感じて。だから僕は、それが何のためになるかすぐにはわからなくても、作曲者のすばらしさを追求することを大切にしたいのです」
 そのようなわけで、周囲の期待のわりに、関本のオール・ショパン・リサイタルは多くない。彼が誘うショパンの“妄想の世界”を覗くことができる貴重な機会。ぜひ聴いておきたい。
取材・文:高坂はる香
(ぶらあぼ2018年9月号より)

朝活コンサート Vol.2「ショパン、名曲の真髄」関本昌平ピアノリサイタル
2018.9/6(木)10:30 浜離宮朝日ホール
問:ピティナ:03-3944-1583 
http://www.piano.or.jp/concert/asakatsu/

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