日本を代表するフルートの名手、工藤重典の最新録音は、パリで活躍するアメリカ出身の鍵盤楽器奏者、シーゲルとの共演で、フレンチ・バロックを核に。ルイ14世への御前演奏に供された「コンセール」や、オペラ作品から抜粋された組曲での、しっかりした様式感に裏付けされた折り目正しい快演は、工藤ならでは。特に、舞曲のしなやかさには、惚れ惚れしてしまう。シーゲルも出しゃばらず、しかし、出るべき箇所では、きっちりと前へ出る、絶妙のサポート。併録されたエマヌエル・バッハのソナタで、次々に移り変わる多感様式特有の色彩感を、鮮やかに掬い取ってゆくのも、このデュオの真骨頂だ。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年9月号より)
【information】
CD『王のためのコンセール〜フルート・バロック 名曲集Ⅱ〜/工藤重典』
F.クープラン(R.シーゲル編):組曲「王のためのコンセール」/ラモー(R.シーゲル編):オペラ組曲/C.P.E.バッハ:ソナタ第1番Wq.125/テレマン:ソナタ ロ短調TWV41:h4/J.S.バッハ:アダージョ ソナタBWV1033より、アリオーソ 協奏曲BWV1056より 他
工藤重典(フルート)
リチャード・シーゲル(チェンバロ)
収録:2017年9月、Hakuju Hall(ライヴ) 他
マイスター・ミュージック
MM-4037 ¥3000+税