バロック・コンチェルトの精髄とカンタータの愉楽
音楽への迸る思いを保ち続け、昨年には創立30周年の節目を迎えたフライブルク・バロック・オーケストラ(FBO)。たとえ手垢が付いたような“名曲”も、豊かな創意と丁寧なアプローチによって、まるで初演のように瑞々しく響かせる彼らが、私たちを「バッハ家の夜の音楽会」へと招待してくれる。
宮廷楽団や教会の楽長を務め、作曲や演奏を“生業”としていたバッハ。しかし、後半生を過ごしたライプツィヒでは、中心街にあったカフェ・ツィンマーマンで、毎週末、演奏団体「コレギウム・ムジクム」を率いて自主的にコンサートを開催するなど、損得勘定を抜きにした“音楽愛好家”としての一面も持ち併せていた。
今回の来日公演で軸となるのは、イギリスの名ソプラノ、キャロリン・サンプソンを迎えての、2つのソロ・カンタータ。罪の嘆きから平安へと至る「わが心は血にまみれ」と、友人の婚礼のために書かれた“結婚カンタータ”こと「いまぞ去れ、悲しみの影よ」は、生前のバッハが何度も再演したが、優れたソプラノ歌手だった妻アンナ・マグダレーナも、きっと歌ったに違いない。
さらに、「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1060a」と、バッハの父の従兄弟の息子、すなわち“はとこ”で、アイゼナハの教会オルガニストを務めていたヨハン・ベルンハルト・バッハの「管弦楽組曲第2番」を披露。これら2曲は、バッハ自身が「コレギウム・ムジクム」のステージで、取り上げていたとされる。「奏でる喜び」に満ちた佳品の数々を、じっくり味わいたい。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年8月号より)
2018.10/22(月)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com/