“ラヴェル直系”の芳しきピアニズム
ヴァンサン・ラルドゥレは、その変幻自在なプレイが、オーケストラの圧倒的な表現力や絵画のパレット上の色彩にも例えられる、フランスの名ピアニスト。ドビュッシーとラヴェルを大枠に、リストとショパンを配した来日リサイタルで、フランス・ピアニズムの真髄を伝えてくれる。
国立リュエイユ・マルメゾン音楽院を経て、ドイツのリューベック音楽大学でブルーノ=レオナルド・ゲルバーに師事。スペインのマリア・カナルス国際音楽コンクールをはじめ、欧州各地の登竜門を次々に制した。古典から現代に至る多彩なレパートリーを的確に弾き分ける一方、ラヴェル本人が演奏への注釈を書き加えた資料を巨匠ペルルミュテールから受け継ぎ、その音楽的な完成度を高めることに力を注ぐ。
今回のステージは、ドビュッシー「前奏曲集第2巻」で幕開け。リスト「詩的で宗教的な調べ」から第7曲「葬送」、ショパン「バラード第2番」を挟んで、ラヴェルの難曲「夜のガスパール」で締め括る。エスプリと詩的な感性が同居する、独特の美学。“ラヴェル直系”の芳しきピアニズムを、ぜひ体感したい。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2018年9月号より)
2018.10/23(火)19:00 Hakuju Hall
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
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