進化を示す、いま再びのシュトラウス
上岡敏之&新日本フィルの新シーズンが、R.シュトラウスで始まる。2016年9月、上岡は同楽団の音楽監督に就任し、最初の定期演奏会でR.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」と「英雄の生涯」を取り上げた。それらは、お約束の大見得や大音響を排した、流麗かつ濃密な交響“詩”であり、新鮮な“音物語”だった。あれから2年、手垢のついた楽譜を一から見直して真の姿を追求する上岡のポリシーは、新日本フィルに少しずつ浸透し、回を追うごとに精緻な美感を増してきた。好例は、最近リリースされた17年秋録音のレーガー、ツェムリンスキー等のCD。繊細な音が精妙に綾なしながら劇的かつ詩情豊かな音楽が綴られていくこのディスクは、彼らの進化を如実に示している。そして来る9月定期に、再びR.シュトラウスが登場する。期待して当然だろう。
ドイツの歌劇場で叩き上げ、複数の劇場の音楽総監督を務めた上岡にとって、R.シュトラウスが十八番であるのは言うまでもない。今回の演目は、交響詩「ドン・ファン」「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」「死と変容」とオーボエ協奏曲(独奏は首席奏者の古部賢一。この名手のソロも要注目)。2年前の大作とは異なる短めの作品集だが、上岡は「3つのストーリーを描くプログラム。表現はこうした小型の曲の方が難しい」と話していた。むろんお決まりの音響パフォーマンスにならないのは必定。コンビ2年の進化と上岡の清新なアプローチが相まって、いかなる演奏が展開されるのか? 3年目のシーズンはスタートから目が離せない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2018年8月号より)
#593 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉
2018.9/14(金)19:00
2018.9/15(土)14:00
すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp/