アニヴァーサリーに聴く珠玉のジャズ・スタンダード
はじめて小林桂の歌をきいたのは、彼が20歳の時だった。卓越したテクニック。フレッシュなのに深みを感じさせる表現力。その歌唱は、とてもついこの間まで少年だった人のそれではなく我々をおおいに驚かせたのだが、それもそのはず、彼はその時すでに5年ものキャリアを重ねていたのだった。そんな小林が来る8月、日経ミューズサロンに登場、音楽生活25周年を記念したクインテットでの昼夜2公演のスペシャル・コンサートを開催する。
近年の小林は、ジャズの歴史に残る有名なスタンダード・ナンバーを、自身の個性を盛り込みながらも、曲が本来持つ魅力を損なうことなく表現するという作業を精力的に続けているが(近作の2枚のアルバムもスタンダード集だ)、このコンサートでも同様に、誰もが耳にしたことがある名曲の数々が披露されるはず。年を重ねてさらに深みと広がりを増した、かつての天才少年の豊穣なヴォイスを、たっぷりと味わいたい。
文:藤本史昭
(ぶらあぼ2018年8月号より)
2018.8/31(金)14:00 18:30 日経ホール
問:日経公演事務局03-5281-8067
http://www.nikkei-hall.com/