世代を越えて名手たちが織り成す“三重奏曲”の醍醐味
ベートーヴェンの三重協奏曲は数あるクラシック音楽の名曲の中でもとりわけ目立つ存在だ。異なる3つの楽器のソリストと指揮者が、この曲ほどがっぷり四つに組んで演奏しなければならないことはなく、それだけに花形の3人のソリストと共に誰が指揮をするかにも関心が集まる曲だ。またそのような性格上、実は実演を耳にする機会は多くはない。それを7月の東響の東京オペラシティシリーズで、北村朋幹、横坂源、山根一仁という今日本で大きく注目を集める若手ソリストたちと、日本を代表する名マエストロ秋山和慶という組み合わせで聴くことができる。
1991年生まれの北村はベルリンで学び、ベートーヴェン国際ピアノコンクールで第2位入賞と古典をしっかり弾きこなす力量を持つ。86年生まれのチェロの横坂はミュンヘン国際コンクールで第2位、ジャン・ギアン=ケラスにも師事した経験を持つ実力派。一方、最も若い山根は95年生まれで、ミュンヘンでクリストフ・ポッペンに師事するなど今後の活躍が期待されるフレッシュなヴァイオリニストだ。そんな3人を国内外で多くの名演を聴かせてきた秋山がどのようにリード或いはサポートしていくのかが楽しみだ。
共に取り上げられるベートーヴェンの交響曲第1番は、のちのベートーヴェンと較べられ若書きと思われがちだが、発表当時は同時代の作曲家や評論家を驚かせた革新性を持つ。トリプルと同じハ長調の交響曲を秋山がどう料理するかにも大いに注目だ。演奏会の開始を告げる序曲「コリオラン」(ハ短調!)も聴き逃せない。
文:山田真一
(ぶらあぼ2018年7月号より)
東京オペラシティシリーズ 第104回
2018.7/22(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp/