日本モーツァルト協会 第600回記念例会

新たな姿を現すモーツァルト渾身の大ミサ曲

 天才作曲家の音楽に親しんでいこうと、60年以上にわたって、演奏会や講演会を通じて、その魅力を発信し続けてきた日本モーツァルト協会。例会が600回の節目を迎えるのを記念し、未完の傑作として知られる「ミサ曲 ハ短調 K.427」を、近年の研究成果を反映した、最新の校訂と補筆に基づく“完結版”で上演する。
 1782年、新妻を伴ってザルツブルクへの帰郷を決めた26歳のモーツァルトは、同地での演奏を前提に新たなミサ曲の作曲を開始。しかし結局、2つの楽章を完成しただけで全曲は間に合わず、翌年秋に未完のまま試演され、その後初演された。しかし、完成部分は、素晴らしい精神性を湛え、大規模なオーケストレーションもあって、「大ミサ」の通称で愛されている。
 一方で、完結させようとの試みも後世になって重ねられ、ロビンズ・ランドン版(1956年)をはじめ、数多くの版が存在。そんな中、今回はモーツァルトやバッハの研究で知られるウーヴェ・ヴォルフと、合唱音楽の権威で指揮者のフリーダー・ベルニウスが共同で手掛けた、最新校訂版(2016年、独カールス社刊)に基づいて演奏する。
 この大作に挑むのは、古典クラリネットの名手・坂本徹が音楽監督と指揮を務める、モーツァルト・アカデミー・トウキョウ(管弦楽&ソリスト&合唱)とアマデウスシンガーズ(合唱)。今回は、ザルツブルクを去る前年の1780年に書かれ、祝祭的な雰囲気に溢れた「ミサ曲 ハ長調 K.337」も併せて取り上げる。オリジナル楽器と古典唱法の清澄な響き、北條加奈(ソプラノ)ら実力派ソリスト陣の快演により、傑作が新たな生命を得る。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年6月号より)

2018.6/21(木)18:45 紀尾井ホール
問:日本モーツァルト協会03-5467-0626 
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