コバケン&ロンドン・フィルのロシア音楽シリーズの最新盤。今や稀少なスタジオ録音と相まって、隅々まで丁寧に描かれた悠揚迫らぬ演奏が展開されている。「春の祭典」は、各パートの動きを明確に表出しながら、雄弁かつエネルギッシュに進行。鮮明な録音が音楽を強化し、中でも打楽器の迫力は凄まじい。「火の鳥」も緻密かつ精妙な造作が印象深く、こちらは曲調的に、細部までリアルな録音がより効果を発揮する。「子守唄」の終盤から「終曲」最初の部分にかけての弦の弱音のかつてない微細な表現など驚嘆の一語。CD録音の存在意義を再認識させられる。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2018年6月号より)
【information】
SACD『ストラヴィンスキー:「春の祭典」「火の鳥」/小林研一郎&ロンドン・フィル』
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」(1947年版)、バレエ音楽「火の鳥」組曲(1919年版)
小林研一郎(指揮)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
オクタヴィア・レコード
OVCL-00653 ¥3800+税