鈴木 舞(ヴァイオリン)

フランス音楽に深い共感を覚えます

C)Yukiko Shibuya
 鈴木舞は日本音楽コンクール第2位、ヴァーツラフ・フムル国際ヴァイオリンコンクール(クロアチア)第1位など、国内外の数多くのコンクールで入賞し、現在は日本とミュンヘンを拠点に活躍するヴァイオリニスト。彼女が最も大切にしてきたオール・フランス・プログラムで、第一生命ホールの人気シリーズ『雄大と行く 昼の音楽さんぽ』に出演する。
「プログラムは悩みましたが、やはりいま一番聴いていただきたいのはずっと大切にしてきたフランスもの。特にプーランクのソナタは昨年9月にリリースしたCDにも入れましたし、ぜひ弾きたかったのです。プーランクの友人で詩人のガルシア・ロルカ、この曲を依頼したヴァイオリニストのジネット・ヌヴーなど、色々な人の“死”に関わる作品ということで圧倒的な深さがあります」
 プーランク唯一の弟子であるピアニスト、ガブリエル・タッキーノから教えを受けたこともあるという。
「プーランクが曲について語ったことなど、たくさんのことを教えてもらいました。またこの曲をフランスのコルマールのコンサートで演奏した際、お客様が身を乗り出して聴いて下さり、終演後には“フランス語を話すように演奏するのね”と仰っていただけました。これは宝物のような経験ですね」
 スイスにドイツなど、様々な国を拠点に活動してきた鈴木は音楽と言葉の結びつきを常に意識していたという。
「小さい時からフランス語に触れる機会があり、フランス語のニュアンスやイントネーションが染みついているせいか、フランスものに対してとても深い共感を覚えます。またフランス人のレッスンやリハーサルでは、“風のように”など、詩的な言葉や感覚を使ったものが多いのです。現在はドイツでどちらかと言えば“建築的”な音楽のつくりかたを体験することで、知っている音色が増え、求める音色も増えました。このことで、フランスものの表現の幅もより広がりましたね」
 特に音色の広がりは今回演奏されるラヴェルの「ツィガーヌ」で顕著に感じられるという。ロマを題材としたヴァイオリンの名曲は数多いが、「ツィガーヌ」は鈴木にとってどんな存在なのだろうか。
「ロマの音楽そのものを書いたというよりも、ロマの人たちが受けてきた迫害の歴史や、彼らのやり場のない悲しみや怒りを表現した作品になっていると思います」
 新たな音色や奏法に熟知し、新しい感覚を得たからこそできる鈴木の“いま”を反映し、同世代の俊英ピアニスト・實川風と共に紡ぐ、オール・フランス・プログラム。案内役の山野雄大との楽しいトークとともに豊かな色彩に酔いしれる時間となるはずだ。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2018年4月号より)

雄大と行く 昼の音楽さんぽ 第13回 鈴木 舞 ヴァイオリン、光が薫るとき
2018.5/15(火)11:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 
http://www.triton-arts.net/