ヘンリク・ナナシ(指揮) 読売日本交響楽団

初来日の名匠がブゾーニの秘曲とシュトラウスで唸らせる


 好演を続ける読響と2012年から17年までベルリン・コーミッシェ・オーパーの音楽総監督を務めたヘンリク・ナナシが初共演を果たす。ハンガリー出身のナナシは、ブダペストとウィーンでピアノと作曲を学び、13年に英国ロイヤル・オペラにデビューするなど、オペラの指揮でも高い評価を得ている。
 3月の定期演奏会は、20世紀初頭に活躍したフェルッチョ・ブゾーニのヴァイオリン協奏曲を含む、捻りの効いたプログラム。ブゾーニといえば、バッハの鍵盤作品などで、過剰な装飾を施した悪名高い(?)改変で知られるが、作曲家としては才能豊かで、オペラや劇音楽をはじめ、多数の作品を手がけた。1897年に書き上げたヴァイオリン協奏曲は、ベートーヴェンやブラームスと同じニ長調で、後期ロマン派の香り高い、20分超の単一楽章の協奏曲だ。ソリストにはフランスの名手ルノー・カプソンを迎える。2016年にリリースしたCD『21世紀のヴァイオリン協奏曲集』が話題を集めたように、同時代の音楽や知られざる名曲の発掘にも積極的に取り組むカプソン。甘美な音色と技巧がブゾーニの作品に新たな光を当てるだろう。
 後半は、交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」。17年にサンフランシスコ・オペラで《エレクトラ》を振り、今年はロイヤル・オペラで《サロメ》を振るなど、R.シュトラウスを得意とするナナシが読響と、この壮大でドラマティックな音楽をどのように作り出すのか、こちらも楽しみである。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2018年2月号より)

第576回 定期演奏会
2018.3/16(金)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
http://yomikyo.or.jp/