タン・ドゥン(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

コンサートホールが呪術的な世界に変貌!?

タン・ドゥン C)James Salzano

 昨年もヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞を受賞するなど、意表を突くアイディアで現代音楽界をリードし続けるタン・ドゥン。作曲のみならず、指揮でも評価が高いが、この3月には新日本フィル定期に登場、自身のタクトで代表作ともいうべきパーカッションとオーケストラの協奏曲“オーガニック3部作”を上演する。
 打楽器協奏曲といっても、ここで独奏者たちが叩くのは水や紙、陶器や石器というのだから、やはり一筋縄ではいかない。シャーマニスティックな伝統の残る中国南部の村で幼少期を過ごし、文化大革命を体験したあとニューヨークで西洋音楽を学んだタン・ドゥンの作風は、ものには魂が宿るとするアジアのアニミズム的な世界観を反映している。川の水、木を加工した紙、土を焼いた陶器への働きかけを通じて人間の生の営みが大地と結びつけられる。
 すでにスタンダードなレパートリーとして世界中で演奏されている「水」、「紙」の協奏曲に加え、とりわけ今回話題になっているのは、2009年に作曲された「大地の協奏曲」の日本初演だ。99個の石器、陶器とオーケストラのための協奏曲は、マーラーが李白らの詩に付曲した「大地の歌」への応答として書かれた。無数の陶石器がパルスを刻み、焼き物の管楽器が太古の歌を謡うとコンサートホールが呪術的な世界へと変貌する。
 すでにタン・ドゥン作品を数多く演奏してきた3名のエキスパート、ベイベイ・ワン、藤井はるか、ジャン・モウがソロに登場する。何気ない素材から彼らが引き出すヒーリング・パワーを全身に浴びて、命の洗濯をしようではないか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年3月号より)

第585回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉
2018.3/17(土)14:00 サントリーホール
問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
http://www.njp.or.jp/

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