世界中で人気沸騰のファンタジック・オペラがついに上陸!
ベルリン・コーミッシェ・オーパー(以下KOB)は、ドイツ・ベルリンにある3つのオペラハウスのうちのひとつで、1947年に設立された。そのKOBが2018年4月、20年ぶりに来日公演を行う。演目はモーツァルトの《魔笛》。だが、あたりまえの《魔笛》ではない。12年に初演されたバリー・コスキー演出のこの《魔笛》は、初演時から大きなセンセーションを巻き起こし、ドイツ国内はもとよりヨーロッパでの公演は完売に次ぐ完売。これまでにヨーロッパだけでなくアメリカ・アジアなど、計12ヵ国21都市で200回以上も上演されている。ちなみにアジアでは、15年9月中国(上海・広州)公演、17年7月中国(北京)公演、17年10月韓国公演を経ての3度目となる。
コスキーはオーストラリア生まれのロシア・ポーランド・ハンガリー系ユダヤ人で、12年にKOBのインテンダント(芸術総監督)に就任。ナチス時代に禁じられていたユダヤ人作曲家の作品を復活させたり、オペラ・オペレッタ・ミュージカル・バレエ・ダンス・映像を融合させた作品を次々に発表するなど、刺激的な企画が高い評価を受けた。13年には、就任わずか1年にしてKOBは権威ある国際的オペラ専門誌『オーパンヴェルト』の「最優秀オペラハウス」を獲得している。
さて、東京・広島・兵庫の3都市で上演されるこの《魔笛》は、そうしたコスキー演出の特徴をもっともよく表した作品だ。注目すべきは、舞台が映像クリエイター集団「1927」による映像アニメーションを中心に作られていることだ。
これまでにも背景にプロジェクション・マッピングの手法を使ったオペラの舞台はいくつもあったが、コスキーの演出は、単に背景を映像で映し出すだけではない。例えば、3人の子どもには蝶がマッピングされ、羽を動かす映像が映し出されることで、彼らが空を羽ばたいているように見える仕掛け。さらに歌がないシーンでは、無声映画のようにセリフを文字で映し出したりもする。全体を通じて、歌手がアニメーションに合わせて演技をすることで、まるで生身の人間がアニメの一部になったかのような不思議な空間を生み出すことに成功している。
その映像のテイストは、例えていうとティム・バートン監督の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』を彷彿とさせるような、不気味さと可愛さが同居したもの。有名な夜の女王のアリアの場面では、女王が大きな蜘蛛になってその長い手足を伸ばし、パミーナは蜘蛛の巣に捕らえられていたりする。この“キモかわいい”映像が、《魔笛》のもつファンタジックかつミステリアスな世界観に見事にマッチしていて、どの場面でもワクワク、ゾクゾク感満載、大人から子どもまで楽しめる舞台になっているのだ。
今回は3人の指揮者が登場するが、そのうち広島公演ではこのところ世界中で快進撃が続く山田和樹が指揮台に立つのも話題。キャストはKOB所属歌手が中心となり、また3人の子どもはテルツ少年合唱団のメンバーが歌う予定。オペラファンは必見、そうでない方もぜひご覧いただきたい。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2018年1月号より)
【動画】新演出の魅力
ベルリン・コーミッシェ・オーパー オペラ《魔笛》
[東京]2018.4/7(土)14:00 19:00、4/8(日)13:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:サンライズプロモーション東京0570-00-3337
[広島]2018.4/11(水)14:00 19:00 広島文化学園HBGホール
問:キョードー西日本092-714-0159
[兵庫]2018.4/14(土)14:00 19:00、4/15(日)14:00 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
問:キョードーインフォメーション0570-200-888
公式ウェブサイト http://www.kob-japan2018.com/