木嶋真優(ヴァイオリン)

新たな成果を得て臨む、濃密なリサイタル

C)TANKA.
 10代から活躍を続ける木嶋真優は、2016年9月の第1回上海アイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクールで優勝した。
「年齢的に最後の機会に、勝ち負けではなく自分がやりたい演奏を目指して受けました。そこで1ヵ月ホテルにこもって自分と音楽に向き合い、将来のアイディアやビジョンも得ました。それが長い目で見たコンクールの収穫です」
 そうした進化を映すリサイタルを、自主公演の形では6年ぶりに紀尾井ホールで行う。
「まずコンクール期間中に新しいアイディアが生まれた曲を入れようと考えて、プロコフィエフのソナタ第1番を最後に置き、新たな世界を開拓しようと、平井真美子さんに曲を委嘱しました。10代の頃にロストロポーヴィチさんから『クリエイティブな作曲家と一緒に曲を作る過程に関わりなさい。他では得られない成長があるから』と言われていたのですが、コンクール後にデイヴィッド・スターン(アイザックの息子)さんからも同じことを言われて、絶対にこのタイミングでやろうと。さらに最初に置くとしっくりくるのでよく弾いているヴィターリの『シャコンヌ』、初めての曲も入れたいのでラフマニノフの『ロマンス』を選び、バルトークとスメタナの作品を架け橋的に加えました。つまり、自分の軸となっていた曲、新しく生まれる曲、自分の形が変化した曲を詰め込んだプログラムです」
 やはり注目は、日本でテレビ等を中心に活動している平井真美子の『マゼンタ・スタリオン』(世界初演)だろう。
「『ワシントンD.C.の桜祭り』で私が演奏しているクインテットのために曲を書いていただいたところ、映像がパッと目に浮かぶような音楽でした。そこでソロ曲もぜひ一緒に作りたいなと。マゼンタはピンクに近い赤、スタリオンは雄の跳ね馬という意味で、彼女が感じた私のイメージだそうです。10分程度のメロディアスな作品になると思います」
 他にも期待のポイントは多い。
「バルトーク『ルーマニア民族舞曲』は、元となった舞曲を現地の方の古い録音で聴く機会があり、通常の演奏とはテンポ等が全く違うことを知ったので、それを反映したい。後半がロシアものなのは、ロシア人の先生から多く学んだこともあって、今の自分を一番出せるから。特にプロコフィエフのソナタ第1番は、ずっと弾いていながら1回置いておきたい、簡単に触れてはいけないと重く深く捉えている曲のひとつで、視点が変わった今取り出そうと考えました」
 ピアノは、ワシントンで共演している現地在住の柳谷良輔。「曲を一緒に作り上げていけるピアニスト」で、「彼だからこそこのプログラムが可能になった」。
 発想豊かな本公演で、俊才の“今”にぜひ触れてみたい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2018年1月号より)

2018.2/2(金)19:00 紀尾井ホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp/